○人間牧場へ家族を誘う
「お父さん、このところ毎日のように人間牧場へお客様が来るようだけど、私はこの2年ほど人間牧場へ行ったことがないよね」と昨日の朝、食事をしながら妻が唐突に私に言うのです。そう言えば人間牧場は、①これからの自分の人生の仕上げのために造った、②家族と向かい合って生きて行くために造った、③これまでお世話になった人や地域に恩返しをするために造ったなどと、人前では綺麗事を並べて説明しているのに、②については設計監理を担当した息子とだけは濃密な親子関係を保っているものの、妻も子どもたちも殆ど疎遠であることに気がついたのです。たまたま昨日は前日から娘と孫が週末を利用して泊りに来ていたので、「そうだな、それじゃあこれから人間牧場へ行ってみるか」という話しがまとまりました。
2歳の孫尚樹にはチャイルドシートが必要なこともあって、娘のトヨタビッツを私が運転し、妻と娘それに朋樹と尚樹の4人を乗せ自宅から約10キロ離れた人間牧場を目指しました。山道沿いは少し秋めいてハゼの木が少し色づき、山柿も黄色く熟れ初めていました。またススキの穂もすっかり開き自生のツワブキの花が今を盛りと咲いているのです。
牧場へ着くなり孫たち二人はまるで解き放たれた犬のように、持参した虫籠と網を持ってそこら辺を飛び跳ねバッタやコオロギを捕まえては歓声をあげていました。妻と娘を完成した姿をまだ見ていないかまど小屋に案内しました。私と息子のやり取りを日ごろ見ていたり、投資金額を知っている妻は、まるで会計検査院の検査のようにあちらこちらを見て回り、特に人間牧場には似て似つかぬ小屋のお洒落な入口や朱色も鮮やかなかまど本体に満足したようで、「さすが」と私より設計した息子のデザイン力に感心しきりでした。
孫たちは時々連れてきているのですが、妻と娘は2年ぶりですからあちらこちらが珍しく、その後変わった場所を見ながら1時間ばかり過ごしました。
「今度は他の家族も誘ってかまどで炊いたご飯を食べながらゆっくり団欒しよう」という話しになりました。娘の旦那も大学に勤めていて忙しく、看護師をしている次男は病院勤務で忙しく、また三男は警察官のためこれまた忙しく、加えて私もかなり忙しい身なので、設計の仕事をしている長男家族を加えるとみんなが揃う日など年に一度くらいしかないのですが、やはり家族と向かい合って生きることを考え、親父が元気なうちに家族そろって人間牧場での休日を楽しみたいと思うのです。
昨日までの土日の二日間、私のいとこたちは山口県へ旅行に出かけました。本家の長男である私にもいの一番さそいがありましたが、あいにく半年前から予定が積んでいて私たち夫婦は参加することが叶いませんでした。ビールの差し入れをしてお茶を濁しましたが、旅先で私たちの話が話題になったものと思われます。まあ加齢とともに徐々に高度を下げて家族や親類との付き合いをしたいと思っています。
「気がつけば 人は来るけど 家族など ほったらかしで 牧場繁栄」
「いいわねえ かまど小屋みて 納得す 妻の一言 何より安堵」
「穏やかな 秋の半日 牧場で 楽しく過ごす 幸せ気分」
「このかまど 今度はご飯 炊き食べよ 注文つけて 牧場後にす」