○直売所が危ないと思う今日この頃
日本全国の市や町や村のあちこちに直売所が出来始めたのは今から20年も前のことでした。それまで野菜は八百屋、魚は魚屋と決まっていました。それまでは野菜や魚は農協や漁協や業者が直接消費地に運んで、私作る人、私運ぶ人、私食べる人というすみ分けができていて、生産地へ行っても見ることも買うこともできなかったのですから、特売所ができるということは当然の成り行きだったのです。生産者や農協や漁協ならいざ知らず近年は行政までもが道の駅や町の駅などを造ってこのような取り組みを始めたものですから、直売所乱立競争月下の時代になって、ひどいところは市町村どころか県までもが、格好いいアンテナショップなどという名称の直売所を設けて商売に乗り出しているのです。
それらの殆どは地産地消という名のもとに産品をこれでもかと並べ立てていますが、野菜や魚を除けばそのほとんどがお土産物屋が作ったものを特徴もなく並べているのです。そして野菜や魚のいらぬ低価格競争をあおって価格破壊に一役買っているのです。
私も仕事がら全国あちらこちらの直売所を訪ねますが、20年前のような直売所が珍しい時代はそれなりの儲けもありましたが、今はその経営や運営も四苦八苦といった嘆き節があちこちから聞こえ、行政が委託費と称して援助する費用がなければ経営が立ち入って行かない所もあるようです。また平成の市町村合併で同じ市内に幾つも同じような道の駅や直売所ができ、これまでのような隣町戦争もできず苦悩の色を見せていますが、どこかで身辺整理をしないと、ただでさえ財政事情の厳しい行政の財政をやがて圧迫することになるのではないかと危惧するのです。行政は直売所の他にも、一時流行った温浴施設にも手を出していますが、相次ぐ不況で温浴施設の経営も、当面の目標である年間12万人を割るようだと見直し対象施設のリストに載せなければならないのです。直売所や宿泊所、温浴施設などを巡る環境はこの数年ですっかり様変わりをし始めました。インターネットの出現で、その場に出かけなくても家庭に居ながらにして買い求めたり予約ができるような時代になりました。いち早くそのことに気付いた先進的な農家などは、何かと規制の多い直売所へ持ち運ぶ手間を省いて、インターネットを顔の見える商売に利用して安心と安全を消費者に売っているのです。
農家離れや漁家離れの直売所は安心と安全が守れなくなるばかりでなく自主運営が出来なくなり、結局は無機質なバーコードなどで機会管理を余儀なくされ、直売所の本当の値打である声かけさえもできない所だってあるのです。まあいつの時代も箱モノの運営は人の善し悪しで決まるのですから、いい人によって運営すれば、物語づくりや特徴ある商売ができて、結果的にはその地域が潤うことになるのです。
直売所の設置にいささかなりとも加担してきた私にとって、直売所の現状は目を覆ったり心を痛めたくなるようなことがいっぱいあります。また「直売所の自主的運営に任せている」とまことしやかな理由をつけ、見て見ぬふりをして説明責任を果たさない行政の担当者も目にしますが、続けるのであればもっと真剣に今一度創設の原点に戻って基本コンセプトをしっかりと考えないと、大変なことになるかも知れません。
直売所が危ないと思う今日この頃です。
「やみ雲に 乱立気味の 直売所 そろそろここら 整理必要」
「いつの世も 施設は人の 善し悪しで 良くもなったり 悪くもなったり」
「この頃は インターネットが 普及して 産直取り寄せ 居ながらにして」
「バーコード 初めて作った その頃に ジーコード作れと 爺さん言った」