shin-1さんの日記

○小さなやかんは直ぐたたぎる

 秋田県へ出かけた折、パネラーとして同じステージに上がったJRの石塚友寛さんは筆まめな方で、時々季節の写真を添えて私の元へ便りを送ってくれます。パソコンが得意なのでしょうが今回は「隣家の屋根に出来た芸術品」と書いて屋根の白い雪をデジカメで撮影した写真をあしらって北国の冬の寒さや楽しみをさりげなく書いていました。石塚さんはとにかく几帳面で、私がどこかで講演した記録をしっかりと手帳に書き込んでいるのですから驚きです。多分今も石塚さんのメモはどんどん膨らんでいることでしょう。ふと送られて来た絵葉書を見ると、旧国鉄マンらしく、切手は列車をあしらっていて、いつまでも保管しておきたくなるような便りなので、早速ハガキファイルに収納しました。

 私の書斎には小さなストーブが置いてあります。冬の訪れとともに昨年の12月頃から使っているものですが、部屋が僅か4畳と狭いため、ストーブを点けると直ぐに暖かくなります。反面灯油の量も少ないため、時々忘れて油が空になることもあるのです。

 このストーブの上にステンレス製のやかんが置いてあります。このやかんは狭い部屋でストーブを焚くと湿度が不足して喉を痛めるため、蒸気を出し湿度を確保するために、年末に小遣い銭をはたいて買いました。三千円程度の小さなやかんです。したがって買い求めた年末から今日まで、まだ3ヶ月しか経っていないというのに、もう3回もお湯がなくなり空焚きをしてしまいました。ストーブの油はなくなれば火が消えますが、やかんのお湯は「少し焦げ臭いなあ」と思った時点ではやかんの中は焼け爛れてしまうので、うっかり物の私にはとても面倒が見切れず、今になって「もっと大きいのを買えばよかった」と悔やむのです。

 「小さなやかんは直ぐたぎる」という言葉を親父から聞いたことがあります。やかんを人間に例えての諺なのでしょうが、今になって思えば、私の事を小さなやかんに例えての諭の言葉だったようです。

 小さなやかん、つまり小さな人間は何につけ直ぐに怒る弱点があるのです。私の場合はその最たるもので若い頃は、仕事から帰って冷蔵庫にビールが冷えていないという理由だけで、妻に食って掛かったものでした。また友だちといい争いをしても直ぐにカッカして、殴り合いのような喧嘩もよくしました。結局は人を思いやったり辺りを見渡し思慮分別ができるだけの心の」余裕がなかったなあと、今頃になってその当時の自分の浅はかさを悔やむのです。

 私たちの身の回りを見渡してみても、そんな小さなやかんに似た人が沢山います。結局最後は自分の未熟さを恥じるのですが、これからは小さなやかんになることなく、大きな度量で生きて行きたいと思うのです。

 今朝も小さなやかんが書斎の隅でたぎり始めました。しかし小さなやかんにもいいところがあって、直ぐに感動するように熱くなるのです。この感動する心だけは見習いたいものです。

  「直ぐたぎる やかんのように 浅はかな 人間なるな 親父の言葉」

  「やかんまた 空焚き中は 空っぽに 蒸気も出ずに 外に出されて」

  「小さくも 感動だけは 忘れまい やかんのように 熱く燃えたい」

  「やかんより 熱湯注ぎ お茶にする 心和みて しばし休息」 

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