○しめ縄作り
年寄りがいると縁起を担ぐことが多く、「そんなもの迷信だ」と割り切って生きてる私にとっては、日々の暮らしの中で何かと衝突することが多いのです。最近は妻までも親父と同じようなことを言うものですから、家で孤立気味になってすっかり面白くないのです。
先日も妻と親父が年末の縁起について議論していました。「しめ飾りは大安の28日が良いし、餅つきは先勝の30日にしよう」と、世帯主の私をまるで無視するように相談しているのです。そして「しめ飾りは大安の28日にするように」とお達しがありました。私はこの日どうしても締め切りの原稿があって、夜は最後の忘年会が松山であるから」と渋ったのですが、「それなら朝早く起きてしたら」とまるで他人事みたいな素気ない返事が返って来ました。家庭の平穏を重んじる長男?としてはその意見も最もと、普通はブログを書いたりハガキを書いたりする早朝の時間を割いてしめ縄作をやりました。
昨日の朝は比較的温かく、隠居の前に今年の夏親父と二人で造った東屋にゴザを敷いて、親父がそぐって(藁の袴を取ること)用意してくれた稲藁を使ってしめ縄作りをやりました。昭和二桁の古い私の年代でも、家でしめ縄作りが出来る人は少なくなったようで、誰に聞いてもホームセンターなどで買ったものを使っているようです。しかし私は子どもの頃から親父に教わってしめ縄の作り方を伝授されているため、自分で言うのも自慢に聞こえるようですが、まあまあ腕の良い方だと思っています。温かいといっても初冬の戸外は座って仕事をすると少し冷たく感じられましたが、親父は自分の部屋の石油ストーブをわざわざ持ってきて暖を取ってくれました。
わが家では4種類のしめ縄を作ります。まず最初におたまじゃくしという少し小さめのしめ縄を11個作ります。これは水神様や車、自転車、神様、仏様、煙会所などに飾るものです。次に親父の家の玄関に飾る少し大きめのおたまじゃくしを作ります。そして本家の入口に飾るのは縄暖簾のようなしめ飾りです。竹に沿わせるよう作るのです。最後は神様に供える海老です。昔は餡子と称する藁簿手を入れていましたが、今は面倒臭いのでそれらしい太目の縄をなって仕上げます。
これが出来上がったしめ縄ですが、今年は餅米用の柔らかくてねばく、長い藁が手に入ったため予想以上の出来栄えで、自分でもびっくりするほどでした。早朝とはいいながら来客が多く、愛知県から帰省した従兄弟が来たり、姉が来たりとひっきりなしにやって来て、その都度私のしめ縄を作る様子を見て一応に驚いて帰りました。
お陰様で親父と妻の言う「大安吉日」の昨日、縁起物のしめ縄は無事出来上がりました。あとは31日の午前中に裏白やお供え物を用意してお飾りとして仕上げたいと思っています。
昨日息子嫁の実家へお歳暮を届けに行きました。しめ縄の話しをすると、嫁のお母さんが「まあ若いのにしめ縄作りが出来るなんて」と驚かれました。「いやいやまだ63歳ですから若くはありませんよ」と照れ笑いをしてしまいました。「ところでお父さん、お父さんのその技は息子の一心君に伝授していますか」と言われてドキッとしました。息子の忙しさにかまけて、すべて私がやってきましたが、もうそろそろ息子への伝授もしなければなりません。私たちは子どもの頃から縄をなえます。ところが今の若者の暮しの中には縄をなうという必然性がないのです。必然性がなければ廃れていくのは当然で、子どもの頃からしめ縄作りを手伝わせてはいましたが、自分で仕切ることは出来ないのかも知れません。それでもこの一言で少し考えを変えようと思っています。31日のお飾り作りは是非帰省する予定の息子とやりたいものです。
「一・五・三 藁を足しつつ なって行く しめ縄作り 今年も出来た」
「そういえば 息子に伝え 出来ずいた 来年こそは 手取り足取り」
「天才と? 見紛うほどに おだてられ 自慢たらたら 姉に説明」
「売っている しめ縄大安 だけでなし それでも親父 大安選ぶ」