○イかとタコ
私の息子はサキイカが好きです。妻の買ってきたサキイカを食べながら先日妙な話をしました。「お父さんこのサキイカはどこの海で泳いでいたもんじゃろか」というのです。「そんなんお父さんにも分からん」といったら、「お父さんは水産高校の出身じゃないん」と偉そうに反論するのです。「じゃあお前は工業高校の機械科を出ているがこのハサミの原料である鉄は何処の国の鉄か知っとるか」と言ってやったら「そんな屁理屈知らん」と険悪になりました。まあ一事が万事次男の息子とはこんな他愛のないやり取りを繰り返す間柄なのです。
しかし、息子の「イカの出身地」を聞いた質問を考えながら、サキイカの入った袋の裏を調べてみると、原材料は「マイカ」と書いているだけでイカの出身地は書いてないのです。袋詰めした業者の名前が家の近くの海産物屋であったので、ついでに立ち寄って聞いたのですが、店の主人も「私は袋に詰めただけです」とスルメより味もそっけもない答えが返って来ました。
聞くところによるとこのイカは韓国から大量に入るのだそうですが、何処の海で泳いでいたのかは結局水産高校出身の私にも分からずじまいでした。
昨日の夜食卓にタコの刺身がのりました。今度は先手必勝とばかりに息子に言ってやりました。「このタコ何処の海で泳いでいたか知っとるか」。息子曰く「双海の海じゃろう」。「何で知っとるん」。だって「下灘のおじさんが持ってきてくれたの見たもん」と小憎らしくいうのです。私の惨敗でした。しかし私も負けてはいません。タコの習性やタコの住処、タコの足の八本などなど様々なタコ知識を説明してやりました。息子曰く「さすが水産高校出身じゃねえ」の終わりに、「でもこのタコは泳ぐのだからどこの海か本籍は分からない」と一発かまされました。
私たちが何気なく食べてるサキイカやタコの刺身も、実は突き詰めれば地球上で獲れているのですが具体的には何も分からず食べているのです。「これ何処で獲れたの」なんて、そんな疑問を持つと深みに入って行くので止めますが、地産地消やスローフードの時代です。少しだけでも考えて食べたいものです。
「このイカは何処で獲れたの息子聞く知らん分からん黙って食べよ」
「タコは何故足が八本イカは十本俺が知ってる訳もないのに」
「屁理屈を言った息子に負けまいとええ歳こいてムキになりつつ」
「何故何故と聞くドラ息子孫似たり成長過程まだまだ知恵が」