人間牧場

〇玄関先の雨漏り

 一昨日の朝仕事に出かける前に息子が、玄関先の天井が濡れているのを目敏く見つけ、「お父さん雨漏りがしている!」と書斎へ私も呼びに来ました。息子に促されて玄関先の天井を見ると、まるで孫が布団に寝小便したように濡れていました。明らかに雨漏りです。前日の雨は春の雨としては、かなり激しかったので雨漏りしたようですが、原因を調べて直さなければなるまいと、近所に住む佐官業を営む従兄弟の家に出かけました。あいにく仕事に出かけて留守だったので、奥さんにそのことを伝え、見に来てもらうように頼みました。

屋根の上で応急修理をする従兄弟の左官さん
屋根の上で応急修理をする従兄弟の左官さん

 昨日の夕方仕事から帰ったという従兄弟は、軽四トラックに梯子や七つ道具を積んでやって来ました。梯子をかけて玄関先の屋根に上がりあちこと見ていましたが、やがて瓦と瓦の谷になっているところにある銅版が腐食して穴がいていることを見つけたようで、とりあえず応急処置のためガムテープやコーティング材を持って再び屋根に上がりました。「ガムテープで雨漏りの応急処置ができるの?」と問いかければ、これが一番とばかりに自信を持った答えが返ってきました。いやはや驚きでしたが屋根の草を抜いたり、もう一方の谷の銅版にも穴が見つかったので補修したと、20分ほどで作業を終わり降りてきました。

 左官さんの言うのには、この家も新築して早40年が経っているので、銅版が腐食しているのは当然だとのことでした。銅版を替えるには屋根をはぎ、痛んだ瓦を替えなければならないので、仕事の段取りが終るまで、本格的な修理はお預けのようでしたが、いやはやまた出費かと諦めながら、少し落胆してしまいました。
 記憶によるとわが家を新築したのは、今から37年前の昭和51年でした。その頃は私も親父も元気で、わが家には家を新築する活気がみなぎっていました。あれから37年はあっという間だったような気もしますが、37年の時の流れは家の屋根と同じようにいつの間にか、私や親父も劣化し、元気を奪っているようでした。

 一昨年息子たちが同居するため、家は一大リフォーム工事をしました。その折玄関先のリフォームだけは費用の関係で先延ばしにしていたのですが、雨漏りの修理と合わせてこの際玄関の工事もしなければならないことを、わが家の大蔵大臣である妻に告げると、年金暮らしの故なのか、少し憂鬱になったと漏らしていました。家を風雪に耐えて守るということは容易ではありません。税金や高熱水費は勿論のこと、こうして突発的な破損が起こると、ただでさえ少ない預金は更に目減りして、将来への不安が募るのです。「まあ何とかなるでしょう」と、踏ん切りの言葉を返してくれた妻のみが頼りです。息子等「お父さん、雨漏りがしている」と言うだけで、何にもしないのですから安気なものです。

  「雨漏りが してると息子 呼びに来る まるで小便 しているように」

  「四十年 経てばあちこち 老朽化 私と親父 同じ憂き目に」

  「雨漏りを 見つけた息子 威張ってる 金を出すのは 親父ですから」

  「また出費 年金暮らしの 老夫婦 憂鬱なりて 天井見上げ」

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