人間牧場

〇大洲市上須戒公民館夜の講演会

 昨日は夜7時から大洲市上須戒公民館で開かれた成人学級へ招かれ出かけました。一年中で夜の最も長い冬至を一週間後に控えたこの頃は、日没が午後5時頃で、わが家を出た五時半にはすっかり夜の帳が降りて、時折時雨れるように降る小雨のためか、道沿いの街灯や民家の明かりもぼんやりかすんで見えました。
 海岸国道から長浜で別れを告げ、八多喜までは肱川に沿って走り、八多喜の駅から右折して、山道に入りましたが、何度か来た道ながら夜のことゆえ間違っては大変と、カーナビを頼りに走りました。二車線が一車線になったりする曲がりくねった道を10分余り走ると、上須戒の家並みが見え、家々を飾るクリスマスのイルミネーションが闇夜に映え、目的地である公民館に到着です。

上須戒公民館の座布団講演会

 事務室に入ると公民館主事さんが、そのうち公民館長さんが私の自著本「昇る夕日でまちづくり」を持ってやって来て、雑談をしながら時間の来るのを待ちました。時間になったので2階の会議室へ案内されましたが、20人ほどの小さな集会と聞いていたものの、この寒空ながら30人近くの人が集まっていました。
 講演が始まる前に参加者とのやり取りがあり、ある女性が「若松さん、あなたがここへ来るのは今回で3回目ですよ」と言われました。「私は2回だと思っていましたが、ところで前2回はどんな話をしたか覚えていますか?」と聞くと、「木のカバンを持って来たことだけしか覚えていませ」と言うのです。「だから私がここへ来る意味があるのです」と、まるで漫談のようなやり取りで、講演が始まる前に会場の雰囲気は最高潮でした。

 冒頭の公民館長さんのあいさつも、私の本を引用されて少し長めでしたし、講演と質疑を含めた持ち時間90分が終って、私にいただいた運営審議会委員長さんの謝辞も、さすが文化的レベルの高いところだと納得させられました。最後はハーモニカ演奏のリクエストまであり、いい雰囲気で締めくくりました。
 講演が終わってから事務所で館長さんと梨の栽培について興味深い話を聞きました。館長さんは観光梨園を経営しているそうですが、新高梨も作っていて、試行錯誤をくり返した結果、年末の贈答用として新高梨を出荷する工夫を編み出したそうです。「少し未完熟な梨を収穫し、低温貯蔵庫に入れて追熟させる方法に辿り着くまでは、折角作った梨を腐らす等、試行錯誤の連続でした」と、瞳を輝かせながら話していましたが、昨日の話には上勝の葉っぱの話や、馬路村のユズ、内子の野菜なの話もしていたので、いい絡み合いだったようです。

 昨日は若い人も何人か見えていて、質問タイムもいつになく活発でした。私の話くらいで地域が元気になるとは思っていませんが、「一度人間牧場を訪ねたい」という若者の言葉に、確かな手応えを感じました。私も人に会い、人に感化を受けて今日まで育ってきたのですから、これからもその橋渡しをして恩を返さなければなりません。「人は人によりて人となる」はけだし名言だと思いながら、元来た道をほのぼのとした気持ちで引き返し、自宅へと急ぎました。謝辞の中で「朝日は希望、夕日は感謝」かもと話された言葉を反芻しながら・・・・・。

  「今回が 三度目ですと 言う婦人 木になるカバン だけを覚えて」

  「前聞いた 話覚えて いないから 私の出番 何度でもある」

  「梨作り 試行錯誤を くり返し やっと日の目を 見たと胸張る」

  「ハーモニカ リクエストあり 朗々と 室内流れ 口ずさみつつ」

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