人間牧場

〇祝婚歌

 私の友人に埼玉県熊谷市に住む龍前宏さんがいます。龍前さんとは私が埼玉県へ公民館の講演会で出かけた折、ひょんなことで知り合いました。それ以来むしろ龍前さんの方から積極的に手紙をいただき、時にはダビングしたテープを何本も送っていただくのです。その殆んどは前の車にカーテープレコーダーが付いていたため、しょっちゅう聞いていました。テープの殆んどは講演録と私と同じ年代でしょうか、昭和時代の懐かしい流行歌が吹き込まれていて、私を若い時代にいざなってくれていたのです。ところが私の車が2年前モデルチェンジしたため、その車にはカーテープレコーダーが付いていないため、もっぱら書斎で聞く程度になっていました。

 龍前さんは大の読書家であり、また時々送ってくれる封書には「相思樹」という俳誌に投稿した文章がコピー同封されていて、また読むと龍前さんの博学を思わされるような凄い文章で、浅学の私には到底真似のできないものなのです。7月に送ってもらったコピーには祝婚歌というテーマで薀蓄が語られていました。龍前さんは吉野弘という詩人の「祝婚歌」を、NHKの名アナウンサーだった中西龍さんが、絶妙な語り口で朗読したものを知人の結婚式で、乾杯の音頭に替えて流したそうです。哀調を帯びた中西流の名調子が会場いっぱいに流れ、盛大な拍手に包まれて乾杯は無事終ったそうです。詩の全文は次の通りでした。この文章を読んで、私も明日友人の息子さんの結婚式に祝辞を頼まれていることを思い出し、送られてきたテープを使わせてもらおうかとも思いましたが、中西龍を知る人も少なくなった若者の結婚式に、私の駄弁では真意が伝わらないと思い、別の祝辞を考えているところです。

 二人が睦まじくいるためには

 愚かでいるほうがいい

 立派過ぎないほうがいい

 立派過ぎることは

 長持ちしないことだと気付いているほうがいい

 完璧をめざさないほうがいい

 完璧なんて不自然なことだと

 うそぶいているほうがいい

 二人のうちのどちらかが

 ふざけているほうがいい

 ずっこけているほうがいい

 互いに非難することがあっても

 非難できる資格が自分にあったかどうか

 あとで疑わしくなるほうがいい

 正しいことを言うときは

 少しひかえめにするほうがいい

 正しいことを言うときは

 傷つけやすいものだと

 気付いているほうがいい

 立派でありたいとか

 正しくありたいとかいう

 無理な緊張には

 色目を使わず

 ゆったりゆたかに

 光を浴びているほうがいい

 健康で風に吹かれながら

 生きていることのなつかしさに

 ふと胸が熱くなる

 そんな日があってもいい

 そしてなぜ胸が熱くなるのか

 黙っていても

 二人にはわかるのであってほしい

 

 

この記事はカテゴリ 人間牧場 に投稿されました。この記事をブックマークするには こちらを。この記事へのコメントをフォローする場合の RSSはこちら。 コメント、トラックバックの受付は終了しました。