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○愛媛大学法文学部公共問題講義

 準教授丹下先生の依頼を受け、愛媛大学法文学部で公共問題の講義をするべく午前中大学へ出かけました。構内にあるケヤキ並木もすっかり葉を落とし、冬の訪れを感じさせてくれました。折しも大学の構内では防災訓練が行われていたようで、迷惑そうな学生たちがまるでアリのようにゾロゾロと歩いて訓練に参加していました。これでは防災訓練にならないのでは?と思ったほどです。

 講義会場は4階の大講義室で1回生の皆さん150人余りへのお話です。丹下先生からの指示は「まちづくり」についてでした。自分の授業は既に終わっているので、気楽な気持ちで話そうと何の用意もせず出かけましたが、さすが丹下先生は事前に会場へインターネットをアクセスしていて、学生を前に私のホームページなどをスクリーンに映しながらパソコンを使ってうまくレクチャーしていて、とても参考になりました。

 私の話が始まると殆どの学生が熱心に耳を傾けてくれるのですが、中には遅れて堂々と靴音高く入ってくる不謹慎な学生もいて、入り口が教壇の横にあるものですから、気になって仕方がありませんでした。一昨年山梨の大学で講義を依頼された折も、そんな光景に悩まされ、思い切って講義開始10分後に入り口にカギをかけて遅れてくる学生をシャットアウトした苦い経験がありました。その後そのことが話題になって、遅刻をなくすための議論がされたそうですが、正直者が馬鹿を見るようなことだけは止めるべきなのです。そこへ行くとわがフィールドワークの学生は真面目で、褒めてやりたいような心境です。

 丹下生が講義の前に話された公共問題については私と同じスタンスなので少しそのことを意識して話しました。格差社会がどんどん広がり、貧富の差、都市と地方の差などはここ数年予想以上に拡大しています。私は田舎に住みながら都会へ行く機会が多いのですが、繁栄しているはずの都会さえゴミ箱をあさったり、路上に暮す人の姿を沢山見てきました。一昨日も東京のど真ん中新宿で見たこれらの光景が目に焼きついて離れないのです。一方地方に目を転じれば、これまた一昨日訪れた秋田県では年末のこの時期だというのに、重い雪が人々の暮しを閉ざそうとしていました。低く垂れ込めた雲間から音もなく降り続く雪は、疲弊した地方を象徴しているようでした。日本全体では自殺者の数が9年連続で3万人を越えたと聞き、そのワーストに名を連ねているのが秋田や青森だとも聞きました。

 でもそんな公共問題を抱えた世知辛い時代や、地方でも頑張っている所がいっぱいあるのです。地域にはそこにしかない資源が山ほどあるのです。その資源を活かし夢を持って生きれば、必ずや道は開けるのです。その典型がかつての双海町でした。何処にでも沈む夕日を地域資源にしながら反対や失敗を恐れず勇猛果敢にチャレンジした結果、お墓参り以外人の来なかった無名に等しい双海町に年間55万人もの観光客が訪れるようになったのです。そしてそれが少なからず経済に結びついて、生き生きと輝く人たちが増え、夕日を自慢する町民が増えてきたのです。

 聴講した学生には小さな一枚のレポート用紙が配られていました。多分私の話を聞いた感想を書いてそれが出席の証になるのでしょうが、レポートを書く行為を通して自分につながらふるさとを思い出し、これから住むであろう場所で、何かのかかわりを持って欲しいと思いました。

  「遅れ来る 堂々靴音 気になって 注意の一球 拾いもせずに」

  「世の中にゃ 様々気になる ことがある 目をそむけずに 生きて行かねば」

  「自殺者が 多いと聞いて 空を見る 四国の空と 大分違うな」

  「スクリ-ンに ホームページが 映されて 下灘駅の ここが旅立ち」

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