〇花落し
桜の花もやっと終わりました。桜の木の下をピンク色に染める花びらの姿を見るにつけ、林芙美子の言葉ではありませんが、「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」という感じも否めません。中でも「椿」と漢字では書いて、いかにも春の花のような感じがする、晩冬花の代表格であるツバキの花もそろそろ見納めで、わが家のあちこちに植えているツバキの木の下には無数の花が散るでもなく落ちて、どこか風情を感じます。
ツバキは花びらが散らず花ごと首から落ちるので縁起が悪いと、庭に植えるのをためらう人もいますが、最近は品種改良もどんどん進んで、ツバキの清楚な美しさに引かれて愛好者が増えているようで、ご近所の奥さんも伊予つばき愛好会に入って熱心に活動しているようで、散歩の途中に出会うと「まあ見て下さい」と自宅に案内され、花の名前や花の特徴、どこで手に入れたかなどを詳しく話してくれます。丹精込めて挿し木から大きくしたツバキなどは思い入れも強いのか立ち止まってまるで自慢話のように話してくれるのです。先日も珍しいツバキだと背丈20センチほどの苗をいただき持ち帰って庭の隅に植えました。
この人の話によるとツバキの中でもやはり素朴な味わいがあるのは、野生種のヤブツバキだそうです。わが家にも鳥が種を落として成長したと思われるヤブツバキが、石垣に根を下ろして成長してみたり、裏庭の斜面には空を覆うほどの大きなヤブツバキの木があって、今時期は落ちた椿の花が雨水を流す側溝に降り積もるほど落ちています。時折掃除をして取り除きますが、今頃は追いつかない状態です。落ちた花積りもまた風情でしょうが、時々ツバキの木の下を歩いていると、落ちてきた花が頭を直撃して思わずドキリとしますが、ツバキの花ももう見納めです。
「名残花 いきなり頭 落ちて来て 思わずドキリ ビックリポンだ」
「ヤブツバキ 素朴なゆえに 気品あり 側溝埋める 花もまた良し」
「木に春と 書いてツバキと 言うのだが 魚に春で 鰆連想」
「行く季節 来るも季節と 辺り見て 侘びを感じる 春の一日」