〇変化した五つの道具
私は18歳から26歳まで青年活動に没頭し、愛媛県青年団連合会々長や四国四県青年団連絡協議会々長を最後に一線を退きましたが、青年団活動で①仲間、②主張、③ふるさと、④感動、⑤夢という五つの道具を手に入れました。この五つの道具は自分のこれまでの人生において、どれほど役に立ったことでしょう。そしてほおっておいたら錆びるであろうこの五つの道具を、これからも時と場所と機会をとらえ、錆びないよう磨きながら生きて行きたいと思っています。
今日は96歳になる親父が毎週2回出かけるディサービスの日ですが、親父の姿を見てふと、私がこれまで使ってきた道具と違い、歳をとったら五つの道具が必要であることに気付きました。まず一つ目は入れ歯です。親父は若い頃鼻ガンを患い片方の頬骨を取っているため、上も下も総入れ歯です。最近体が少し小さく縮んだため、入れ歯の具合が悪く、しょっちゅう妻の勤めている歯医者さんで直してもらっていますが追いつかないようです。入れ歯は日常の食事に欠かせないものなので、高齢者にとっては体の一部分として一番の必需品かも知れません。
二つ目は杖です。「お迎えは足からやって来る」の例えのように、高齢になると足や腰が衰えます。特に膝が悪くなると杖がなければ歩くのもおぼつかなくなるのですが、認知症の進んだ親父は杖を3本も持っているのに、その杖をどここことなく置き忘れ、いつも探さなければならない有様です。それでも外出用の軽い杖は、三つ目の道具である手押し車にちゃんと積んでいて、いつでも間に合うようにしていますが、最近まで外出に使っていた手押し車は外出の機会が減ったため、玄関内に置いたままのようです。身を委ねるように手押し車を押して歩く高齢者の姿は、まるで田舎の風物のようで、何ともほほえましいものです。
四つ目は補聴器と眼鏡です。耳も目も老いとともに遠くなります。高いお金を出して作った補聴器も眼鏡も96歳になった親父には、この2~3年必要のないものになったようで、テレビのボリュームを高くして見たりしていますが、眼鏡をかけることも余り必要でなくなりました。最近必要となったものは五つ目パンパースです。妻がスーパーなどで買い求めてきたパンパースを、最初は嫌がっていた親父も、夜寝るときなどは盛んに使うようになったようで、月曜日と金曜日のゴミ出しの日に、ゴミとして出すのも私の仕事となりました。気がつけば①入れ歯、②杖、③手押し車、④補聴器と眼鏡、⑤パンパースはどうやら親父生きていくための道具で、私の将来の必需品かも知れないと、まるで他人事のように笑い話の道具にしている自分の姿に、ハッと驚くのです。
「人生を 五つの道具 使い分け 今の今まで 豊かに生きた」
「親父見て これから先は 新しい 道具必要 ドキリと思う」
「パンパース 最初嫌がり 抵抗を していた親父 今は難なく」
「他人事 思って笑い 転げるが 間もなく俺も 親父のように」