人間牧場

〇弟の帰省

 前日、和歌山県古座川町(奥さんの実家)と奈良県大和郡山市(自分の家)の二つの家を二地域移動生活している弟から、「明日の午前中親父の顔を見に帰る」と電話が入りました。そのことを前もって話すと親父が嬉しさのため、ワソワして体調を崩してはいけないと二人で相談気配りし、親父へはその日の朝直前になって話しました。妻はこの日あいにく仕事だったので、昨日の夜弟夫婦のために、昼食の準備をしてくれていました。冷蔵庫に入れた料理を出すこと、お味噌汁は時間が来たら温めること、近所のお寿司屋さんへ頼んでいる握り寿司と巻寿司を11時に取りに行くこと、お茶葉はキウスに入れているのでお茶をヤカンで沸かすこと等など、仕事に行く前耳にタコができるほど私に準備手順を説明し、妻は仕事に出かけて行きました。

久しぶりに和歌山から帰省した弟夫婦
久しぶりに和歌山から帰省した弟夫婦

 弟は午前10時の到着だと言っていましたが、9時30分に到着しました。9時に「忠行が弘美さんと二人で帰ってくる」と親父に告げると、親父は驚いた様子でしたが、私が食事の準備をかいがいしくやっている様子を見て満足したのか、嬉しそうに弟の到着を部屋の中で待っていました。
 弟は定年後5年が過ぎたようですが、奥さんの実家の和歌山県古座川町で晴耕雨読の暮らしを続けています。自分の家は奈良県大和郡山市ですが、その家を息子たちに譲っているものの、警察官としてこの春の人事異動で東京の警察庁へ異動が決り、家族全員で東京へ引っ越したため、時々掃除に帰っているとのことでした。また5年間晴耕雨読の生活をしていたようですが、土木ゼネコンでトンネル工事のスペシャリストとして働いた、実績が買われたのか声を掛けられ、今年から田辺に通って週4日ほど働くとのことでした。

 妻の用意した料理を食べながら久しぶりに積る話をしました。私より3つ年下なので65歳になり、白髪も目立つようになりましたが、体調はすこぶる元気で、奥さんと仲良く暮らしているようで一安心です。今年は母親の13回忌で法事をしなければなりませんが、仕事に赴いているので帰れないかも知れないと言っていました。僅か3時間余りの短い滞在で午後1時前、親父や私たち夫婦、息子たち家族に見守られて帰って行きましたが、「もうわしも老い先長くはない」と寂しく言って弟夫婦を見送った、親父の寂しそうな背中が印象的でした。
 子どもを産んで育てても、弟のように高校を卒業して直ぐに都会に就職すれば、親子で過ごした時間は僅か18年です。その後50年は親元を離れ、望郷の念に駆られながらも、気がつけば自分もまた同じように自分の子どもが自立して、夫婦だけに戻るのです。幸いなことにできの悪い私のような長男息子ながら、同居できる親父はまだ幸せだと思いますが、人間の一生とは考えてみれば、はかないもののようです。

  「弟が 久方ぶりに 帰省する 喜び束の間 親父落胆」

  「わが子でも 一緒に暮らす 時短か 五十年間 別れて暮らす」

  「兄弟は いいものなれど 同じ時 過ごす時間は 余りに短し」

  「長男の 嫁の気配り さすがだと 親父喜び 歓待食事」

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