〇何とも不思議な浜昼顔の咲く砂浜光景
「♭名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実ひとつ ふるさとの岸を離れて~♯」は島崎藤村作の「椰子の実」という歌の一説ですが、海岸沿いには色々な見知らぬ彼方より沢山の漂着物が流れ着きます。その中には比較的塩分に強い、海岸に自生する植物の種もあるようで、ふたみシーサイド公園の砂浜には、水泳客が落としたと思われるスイカの種が芽吹いたり、時にはトウモロコシ一本から無数のトウモロコシが生えたりして驚き、これを観光に生かせないか、よからぬアイディアを思いつき、実現はしなかったもののシーサイドの砂浜でスイカを作ってみようと思ったこともありました。
昨日の夕方人間牧場での農作業を終えて帰る途中、灘町海岸で奇妙な光景が目に入りました。海岸国道は毎日のように車や人が通りますが、この光景を見て「?」何て思わないのか、気がついても通りすがるのか、はたまた気がつかないのか、多分車を止めて海岸に降り、その光景を写真に収めるのは、私ひとりくらいだろうなあと納得しつつ、傍に近寄ってみました。
私の思っていた通り、砂浜に無数に咲く花は浜昼顔でした。誰かが種を蒔いた訳でもなく、これは紛れもなく海流が何処かからか運んできた漂流植物なのです。太陽に向かってラッパ状の花を一斉に開いて咲いている浜昼顔の花は、薄いピンク色の可憐な花で、いつまでも見ていたいような光景でした。
この砂浜にはもう間もなくキンケイソウの黄色い花が咲きます。キンケイソウは道路護岸工事の後に、種子吹きつけする帰化西洋植物で、この花もここへ蒔いた訳でもなく、多分車や荷物に混じって運ばれ、ここに安住の地を求めて、芽吹き咲いて増えたものでしょうが、キンケイソウも塩分に強い植物だと思われます。
先日愛媛新聞カルチャースクールで、「花」をテーマに2時間講義をしましたが、昨日人間牧場で見たコンニャクの花や、海流に乗って流れ着いて咲いた浜昼顔、海辺に咲くキンケイソウについては話すらしませんでした。花は自分の子孫を残すために花を咲かせて実をつけます。せめて花が咲いた時だけでも、愛でてやりたいものです。花を愛でるような心優しい人間になりたいとも思いました。
「灘町の 砂浜に咲く 花を見て ああ綺麗だと 思うだけでも」
「海流に 乗って漂着 人知れず 咲く浜昼顔 花ぞ美し」
「薄ピンク ラッパを広げ 太陽に 向かって一斉 浜昼顔が」
「朝顔や 昼顔次は 夕顔と 少し違った 趣楽しむ」