人間牧場

〇わが家のお飾りはやし

 私が子どものころの田舎は、新正月と旧正月が同居していました。一年中に不幸のあった喪に服す家では、旧正月にお飾りをしたり、島や半島の農山漁村では遅くまで旧正月の風習が残っていたようで、民俗学者の宮本常一流にその実態を一度調べて見たい気もしていますが、平成に入って既に四半世紀、昭和は遠くなりにけりで、多くの伝統や風習が消えていこうとしていることは返す返すも残念です。
 変わったことといえば成人式です。何年か前までは1月15日が国民の祝日成人の日でした。ところが政府の誰がどんな思いで変えたのか、成人の日が第二日曜日の明くる日に変更され、主催する側の都合などで成人式を一日早めた日曜日にするところもあるようです。また成人の日恒例だったNHK青年の主張もいつの間にか姿を消してしまったようです。(ちなみに私は第14回NHK青年の主張の県代表でした)。

わが家のお飾りはやし
わが家のお飾りはやし

 成人の日の恒例行事としていたわが家のお飾りはやしも、祝日の変更で毎年やる日が変わりました。年末12月30日に戸口や神仏のあると思われる場所に飾っていた注連縄や注連飾りを1月14日に集めて、畑の隅に積み上げて火を放つのです。空気の乾燥しているこの時期なので藁でできている注連飾りはあっという間に燃え尽きます。煙や炎が無病息災に効くという昔からの言い伝えなので、あいにく家族の殆どは出払っていたので、私と親父で家族の分まで煙や炎を一身に受け、炎で鏡餅を炙って家に持ち帰り、昨日はその餅を焼いて食べました。
 こんな古い科学的には何の根拠もない神仏信仰の風習も、息子の代には多分消えてなくなるのでしょうが、せめて神仏に祈りを捧げて生きるような宗教心だけは持っていて欲しいと願っています。

 昨日は家の裏の急斜面に植えている柿の木の剪定をしました。見よう見真似の自己流なので、果たして正しいかどうか分かりませんが、新梢を短く切り詰めたり込み合った枝を鋸で切り落としました。真下が斜面の高い場所なので怪我をしないよう注意をしながら30分ほどの作業で終らせました。切り取った枝を集めて焼却場へ運び終えたところへ、保育園に通う孫たちが帰って来ました。「おじいちゃん、危ないから気をつけてね!」と、同居ならではの優しい励ましの言葉をいただきました。孫たちの目には木に登った私の足元が、おぼつかないように見えたのかも知れないと、一人苦笑しました。
 柿の木もスモモの木もまだ木々の芽は固く、春の足音は見聞きできませんが、お飾りはやしや剪定作業で春は確実に近づこうとしています。

  「正月に 飾った注連縄 畑隅 集め火放ち 息災祈る」

  「火と煙 身体にこすり 健康を 祈る老いたる 親子二人で」

  「お飾りを はやしてやっと 正月が 終ったような 気分になりて」

  「柿の木の 剪定作業 気をつけて 孫の声援 あり難きかな」

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