〇手の平に止まったメジロ
昨日の天気予報では曇りマークでしたが、「所によって雨」が的中したのか午前中、少し強めの雨が降りました。私は余程の暴風雨でない限り、幾ら雨が降っていても長靴に傘の出で立ちで、家にいれば毎日散歩に出かけるのです。私がウォーキングパラダイスと名付けている裏山の坂道は、周囲に杉やヒノキの木立の中なので、風もなく人にも会わず比較的穏やかな雰囲気で歩けるのです。それでもズボンとジャンバーが少し濡れ、ヒートテックの下着のために汗をかいてしまい、着替える羽目になりました。
朝の散歩で私の携帯に内蔵されている万歩計の歩数は約7千歩でした。少し物足りなさを感じていたので、一仕事を終えた夕方午後4時ころ、雨が上がったのをいいことに再び同じウォーキングパラダイスの道を歩きました。頂上付近の未舗装踏みつけ道を行ったり来たり10回程度して道を下ると、野鳥のメジロが私の直ぐ目の前のシャシャ木に止まりました。私も立ち止まり、手の指を差し出して口笛を吹くと、何とこともあろうか、私の手にメジロが止まりました。驚いたのなんのって、これはもう奇跡に近い出来事でした。
私はそっと両手でメジロを包み込み、メジロの温もりを手の平で感じながら、少し自慢がしたくて自宅まで連れて帰りました。自宅に帰ると丁度息子嫁が孫2人を保育園から連れて帰ったところだったので、孫たちはもう大騒ぎです。早速虫籠を取り出して中へ入れて観察することにしました。最初は驚いてバタバタ羽根を動かしていたメジロも観念したのかおとなしくなって、孫たちの視線を集めていましたが、「野鳥を飼いたい」という孫たちに、「お母さんメジロが迎えに来ているから放してやろう」と納得させ、庭に出て虫籠から放してやりました。最初は庭をヨチヨチ歩きしていましたが、孫たちに追われ、そのうち何処かへ飛び立ったようでした。今朝孫たち2人は起きて着替えると直ぐに、庭に出てメジロを探していたようですが、何処にも見当たらず私の所へやって来てメジロのことを聞き返していました。
それにしても私の日々の暮らしなど、何の変哲もないように見えますが、予期せぬ面白いことがあるものです。メジロに聞いた訳ではありませんが、察するに私を木に見誤ったのでしょうか、それとも私の口笛を母鳥か仲間の鳥の鳴き声と聞き違えたのでしょうか、無防備にも私の手に止まりました。昔聞いた童話ですが、良寛さんという偉いお坊さんが庭に来た雀と、戯れ遊ぶという話を聞きました。良寛さんという自我を超越した高僧ともなると、動物と話すこともできたのでしょうが、私のように我欲と煩悩の塊のような人間に、メジロが心許すはずはないと思いながら、メジロさえも木の小枝と見間違うほど隙だらけの自分だとネガティブに考えるのか、いやいや私も自然の一部とメジロさえ見紛う自然体になったとポジティブに考えるか、後者だと自分を納得させながら、まあ降って湧いた他愛のない話にニンマリしているところです。
「飛んで来た メジロが一羽 指先に 止まりバタバタ 小枝と間違う」
「良寛に なった気分で 話しかけ メジロ一羽を 手に持ち帰る」
「手を丸め 野鳥温もり 感じつつ 母鳴き声を 辺りに探す」
「あのメジロ 何処へ行ったと 問う孫に 母ちゃん迎えに 来たと説明」