〇懐かしい新井のおばさんに出会う
木造校舎で有名な翠小学校の改修が終わり、先日は発表会のご案内をいただきながら県外へ出張していたため、そのことが少し気になっていました。急な思いつきで学校を訪ね許しを得て写真に収めた帰り道、ひとりのおばさんに出会いました。剣道を走っていると何やら川の向うに顔見知りのおばさんが見えました。「あっ、新井のおばさんだ」と思って単車に乗ったまま手を振りました。気づいたのかおばさんも手を振ってくれました。そのまま帰るのも失礼と思い、橋を渡った直ぐ横の道を引き返し、おばさんの家の玄関まで行きました。
聞けば私と認識もせず手を振ったらしく、私のいきなりの訪問にとても驚きとても喜んで、「まあお入りなさい「と家の居間に案内されました。一人住まいの独身女性の家へ入るのは気が引けましたが、まあ大正7年生まれの91歳のおばさんだからと割り切って、言うがままコタツに入り話を始めました。
この方は新井淳江さんでかつて若い頃は農協婦人部の部長さんもされていました。税理士だったご主人が亡くなってからは一人暮らしをしているようですが、3年前娘さんとご一緒にシーサイド公園でお会いしたことを覚えておられて、「3年ぶりかな」と、聡明な記憶力に驚いてしまいました。
門構えの立派なお屋敷に一人暮らしているので、時々夕凪荘という特別養護老人ホームへディサービスで出かけるという話、車に乗れないため買い物が不便だという話、一人で暮らしていると気ままだが多少不安になるという話、そして私が立ち寄ってくれたことが対ソ嬉しいという話などなど、お茶を飲みながらつかの間の話に花を咲かせました。
このおばさんは若い頃からきちんとした身なりをして、笑顔を絶やさない人でした。ゆえに歳をとったらあんな年寄りになりたいと思っていた一人なのです。「まあお茶でも」「まあバナナでも」と差し出され、嬉しさを隠せないようでした。「歳をとったら人に声をかけてもらい話すのが一番の幸せです」という言葉を聞きながら、後ろ髪を引かれる思いで別れを告げました。玄関先で見えなくなるまで手を振る姿を単車のバックミラーに目をやりながら、出会いや老いについて大いに考えさせられました。
この日私は持っていたデジカメで断りを入れて写真を撮ってあげました。はにかんだ様子がまたとても可愛らしく、デジカメに写った写真を見せると、デジカメの不思議に見とれながら、また二人で大笑いしました。
今日は雨模様ながら、翠小学校に集まって、私が実行委員長をしている子ども教室のふるさと体験塾が行われるため、翠小学校へ行くので、早速写真をプリントしてプレゼントしてあげたいと思っています。
「腰かがめ 見えぬなるまで 手を振って 送ってくれた 人ぞ愛おし」
「一人住む 家に入りて 懐かしき 頃の話に 花を咲かせる」
「ああ嬉し 手を取りながら 涙する 老婆の姿 母に重ねて」
「写真撮り プリントアウト したものを 自宅に届け 再会約す」