人間牧場

〇7本足のタコ
 昔からタコの足は8本と聞かされていました。私は水産高校漁業科出身なので、時々見たこともないような珍しい魚が獲れたら、漁師さんが「これ何という魚?」と聞きに来たことが何回かありました。「漁師のあんたが知らないのに私が知るはずがない」とはぐらかしますが、持っている魚類図鑑を調べてやんわり答えるようにしています。

今年の夏、子どもが泳いでいてタコを獲ったが足の数を数えた所、足が7本しかないので不思議がってお母さんと一緒に私の所へ聞きに来ました。そこで水産高校在学時代に魚類に詳しい先生から聞いていたタコの話をしてあげました。するとその子どもは熱心にメモをして夏休みの自由研究にしたようでした。

①タコは分類上貝やナメクジと同じ軟体動物であること、②タコの所属する頭足類は軟体動物の中でも見かけによらず知能が高く超エリートであること、③寿命は僅か1年~1年半で、若し20年~30年生きられたら相当な知恵者になるかも知れないこと、④狭い水槽に閉じ込めたりするとストレスが溜まって病気になったり精神錯乱を起こして自分の足を食べたりすること。

⑤タコの目は脊椎動物に近い構造をしていて、図形識別能力を調べたところ、形状だけでなく大小、向き、明暗まで識別する、ネズミやハトより優れた学習能力があること、⑥8本足に並んだ吸盤は味覚の受容器であり、甘み、辛み、苦みを識別する能力は人間のおよそ100倍であることだと話してやりました。

「進ちゃんって何でも知っていてまるでタコみたい」とお世辞を言ってくれました。どうやらタコの足が1本足りない謎が解けたようでした。その晩その子とお母さんが茹でたというタコの足を3本お礼に持って来てくれました。「7-3=4、4∔3=7」などと足し算引き算ならぬ、タコ算をして楽しく遊んで帰りました。大笑いの一日でした。

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