〇飲み屋さんの小便器
胆のうにポリープが見つかり、18年前に摘出手術を受けました。その影響でしょうか、手術後63キロあった体重が減り始め、あっという間に13キロも激やせしました。「若松の進ちゃんはガンで余命いくばくもない」と、人の不幸を喜ぶ人たちの間でうわさが広がりました。自分でも「これはおかしい。ひょっとしたら不治の病では?」と疑ったのも当然です。その後元気は回復したものの体重は一向に増えず、今も当時のやせたままの55㎏をキープしています。
手術を担当した県立中央病院の先生に「お酒は?」と聞くと、「ビール1本程度なら」と言われました。それまで浴びるほど飲んでいたので多少ためらいもありましたが、「ビール1本程度だったら飲まない方がいい。飲むんだったら100、飲まないのなら0」と、すっぱりお酒を飲むことを止めました。最初はテレビCMでビールを飲む姿が映し出されると、禁断症状とでもいうのでしょうか、心が乱れましたが初志貫徹して今に至っています。
お酒を飲んでいたころの年末は、まるで松山から双海町へ通っているように、連日連夜馴染みの店を飲み歩き、大いにノミニケーションを楽しみました。今は馴染みだった店へ行くこともなく、ひっそりと暮らしていますが、それでも時折ウーロン茶党ながら付き合い酒に付き合わされて出かけますが、昨日行ったのおっ宮の店先に白い塩をこんもりと盛っているのを見ました。店内に入りトイレに入ると、男子トイレの小便器の中に、これでもかというほど溢れるように氷が入っていました。
最初は小便をしていいのかどうか一瞬迷いましたが、塩盛りは縁起を担いで大入りを期待してのことでしょうし、小便器の氷は臭み消しや衛生面での気配りでしょうが、温かい小便をかけても大量の氷は解けることなくありました。酒を飲まないという自分の体内に潜むもう一人の自分との約束は、多分もう破ることはないだろうと思うと、行きつけ馴染みだったお店の女将さんや、愛称で呼んでいた若い女性店員さんの顔が思い浮かびました。今頃どこで何をして暮らしているのでしょうか。そう言えば先日飛行機の中で偶然にも店をたたんで久しい女将さんと隣の席に座りました。何日かして、「懐かしくて涙が出るほど嬉しかった」とお便りハガキまでいただきました。酒はやはり神代の昔から「元気の出る水」のようです。
「割烹の 玄関先に 塩盛って 商売繁盛 大入り満員」
「小便器 氷をいっぱい 詰め込んで ためらいながら 用を足したが」
「若い頃 連日連夜 飲み屋街 繰り出し飲んだ 今は懐かし」
「スナックの 愛称呼んだ あの子らは 今頃どこで 何をしている」
酒は「元気の出る水」の人も居れば、そうでない人も居ます。私もそうでない人の一人になりました。実際に元気の出るようになるには満足のいく事をしている時であって、酒は元気が出るのでなく酔って快感状態になるだけのものです。ひどい時は中毒になるだけです。だから浴びる程は飲みません。