〇手作りの素敵なうちわが届く
私が役場で地域振興課長をしていた最初は、課長以外まったく課員部下のいない日本一小さな課でした。自分で考え自分で行動する気安さもあって、自分では大いに満足し、そんな課を作ってくれた町長さんに感謝したものでした。総務課長さんから「一人の課で部下を管理する必要がないので、管理職手当ては要らないのでは!!」と冗談交じりに言われましたが、「自分で自分を管理すのは難しい」と言って、管理職手当てをいただくようになりました。
夏が来るといつも思い出すのは、「暑いといったら100円」という目標を掲げ、小さな「暑くない貯金箱」を置いて、「暑い」という言葉を発する度に100円を入れました。地域振興課長の仕事は最初は主にシーサイド公園の整備や運営の立ち上げでしたから、外へ出る機会が多く冷房の嫌いなこともあって、「暑いを連発し自己申告で入れた100円はあっという間に1万円を越えました。
そこで考えたのが、無地のうちわに「暑いといったら100円ですよ!!気をつけて」と書いて机の上に置いたところ効果覿面で、以来人の「今日は暑いですね」の言葉に惑わされることもなくなり、その夏を終えたのです。うちわにはそんな懐かしい思い出があるものですから、収集した訳でもないのにうちわが50本以上も貯まり今に至っているのです。
一昨日大分県佐賀の関に住む東布紀男さんから、ゆうパック便で素敵な3枚のうちわが送られてきました。居酒屋を営む東(あずま)さんとは、招かれた佐賀関での講演会で知り合い、一度伝説の関サバ料理を食べに東さんの店へお邪魔したことがあります。聞くところによると東さんは愛媛県八幡浜の出身だそうで、初対面から気心が知れすっかり意気投合しました。しかしもう7~8年も前の出来事であり、お互い記憶の外にある人のようでしたがどうしてどうして、こうして1~2度の出会いを忘れることなく覚えていてくれたことは大感激でした。
東さんは絵や文字が得意で、大分市と合併する以前の佐賀関町のイラストや、看板文字は一手に引き受けていた達者な方でしたが、今は老人ホーム等に出かけ、お年寄りを相手にぬりえ教室を開いたりボランティア活動に余念がないようで、旺盛なボランティア精神に頭が下がる思いです。今年はうちわ500本に絵と言葉を書いているそうで、そのうちの3本が私の元へ届けられたのです。
私は昨日早速佐賀関の親人である渡邊又計さんに電話を入れ、東さんの近況等を詳しく聞きましたが、一度東さんのお店に覗きたいものだと思っています。
届いたうちわにはお地蔵様の絵と言葉が添えられていました。妻が「お父さん、使うのが勿体ない」というほど立派な出来栄えです。3枚の中の一つに「あなたの腹の中」という意味ありげな言葉が書かれていました。自分さえも分らない自分の腹の中は一体どうなっているのでしょうか。自分の腹の中も頭の中も所詮一生分らないのでしょうが、「悪いことは辞める」「良いことはする」という二者択一の「良いこと」を実践し続ければ、腹の中にどんどんいいことが貯まってくるのかも知れません。東さんから送られて来たうちわでそっとあおいで見ました。心地よい風が起こりました。「風を起こす」ことの意味を考えました。
「関サバで その名を馳せた 佐賀関 ウチワ届いて 活き(粋)がいいわい」
「扇子(センス)より うちわ庶民の 風のよう 浴衣背中に 差して絵になる」
「絵に書いた お地蔵様の ありがたや 両手合わせて 片手であおぐ」
「私には 分らぬ自分の 腹の中 何を溜めるか 生き方大事」