○春が来た
宇和島市などは桜開花の一番乗りを目指して、様々な取り組みがされて開花宣言されたものの、今年は桜の開花予想が大幅にはずれ、いつもの年も他の地域より遅れて咲く私の町などはまだ固い蕾のままなのです。それでも桜の木々の枝は確実に赤みを帯びて、朝晩は底冷えがするものの開花の予感を感じさせてくれるのです。
家庭菜園の冬野菜類も完全に春モードで、ブロッコリーやチンゲンサイ、カブなどは黄色い菜の花状となってトウ立ち状態になってしまいました。これらの菜の花もそれなりに美しいのですが、変わった目で親父から見れば見苦しく、早く片付けるようにと再三再四教育的指導の言葉が私に向かって発せられるのです。
2~3年前までは耕運機も使い足腰もしっかりしていたので、私など相手にもせず一人で黙々と片づけをしてくれていましたが、さすがに90歳の大台を超えると、機械類は危なくて使えず、地中深く根を張った根菜類を引き抜く馬力もないため、口だけは元気なこともあって、私の力を頼るのです。
毎日家庭菜園で野菜を収穫している私としても同じようなことを考えているのですが、ついつい延び延びになっていましたが、昨日の午前中思い切ってチンゲンサイとブロッコリー、カブなどの残菜を引き抜き、周りの雑草を鍬でかき集めて、畑の隅のつつじの根元にうず高く積んで処分しました。それでも大根は首を切ったままトウが立つこともなく残っているので、2本ばかり引き抜いて掘った穴の中へ首から上を出して埋め込みました。こうすれば20日間くらいは美味しい大根が食べられるのです。
耕運機を倉庫から取り出し、エンジンをかけて土を堀り起こす作業を始めました。かろやかなエンジン音が山々に木霊して、まだ下手糞な鳴き声しかできない鴬の鳴き声をかき消していました。私が耕運機で耕していると、どこからともなく一羽のカワセミがやって来て、掘り起こした土の中から出てきたミミズを啄ばんでいるのです。エンジン音にも私の気配にもまったく動じず私の後ろをついて歩くカワセミの姿についつい嬉しくなりました。
実はこのカワセミは我が家の近くに住んでいるらしく、わが家の庭や屋根に止まっているところを良く見かけるし、ブルーベリーの実を盗んで食べる私にとっては憎っき鳥なのです。この鳥のお陰で今年の春は親父がブルーベリーの周りに食害用の防鳥ネットを張ってしまったのです。カワセミにはそのことへの侘びを含めた、ミミズの恩返しとなりました。
2時間ほどの作業ですっかり家庭菜園も綺麗になり、あとは一雨ごとに温かくなる春の雨を存分に吸わせて畝を作り、20日もすればナスやキューリ、トマト、オクラ、ピーマンなどの夏野菜の苗を買ってきて植えるのです。毎年の事ながら得てた野菜もありますが、トーモロコシや大豆のようにいつまで経っても不得手なものもあります。今年こそはこれらの野菜にも挑戦したいと思っていまが、親父の目に叶うかどうか心配です。
昨日辺りからすっかり春めいてきました。里にも待ち遠しかった春が来て、畑仕事が待ち受けています。今年も体に十分注意して元気に頑張りたいと思っています。
「春が来た 冬の野菜を 片付けて 耕運機にて 土をならしぬ」
「地中より 出てきたミミズ 啄ばんで ちゃっかり生きる カワセミ傍で」
「同じこと 毎年春に 繰り返す またまた一つ 歳を重ねる」
「陽だまりで 温もり感じ 日向ぼこ ついウトウトと 親父過ごしぬ」