○吊り雛飾りを見に行きました
旧中山町と旧双海町の境に犬寄峠があります。かつては国道56号線の交通の難所でしたが、昭和40年代に犬寄トンネルが開通して一気に便利になりました。しかし曲がりくねった旧道沿いは最近開通した高速道路の賑わいを他所に、いつしか忘れられたような場所になってしまったのです。
そんな犬寄峠に程近いところに私の友人の松浦さんや高市さんたちが住んでいます。松浦さんはご主人が住民自治佐礼谷の会長さんだし、奥さんは市役所の部長を最後に退職され、色々と社会活動をされていて尊敬するご夫婦なのです。
高市礼子さんご夫妻も穏やかな趣味に生きる人で、その趣味たるや何につけても玄人はだしで、特に蓑虫の蓑を使って作った衣服などは常識を破る発想で、私たちをアッと言わせたものです。礼子さんはこの4~5年座敷吊り雛に凝っていて、昨年は満開の桜の時期に自宅近くの一戸建ての家に展示して、内外から多くの見学者を集めていました。私もお誘いを受けて妻と二人で出かけましたが、古布を使って作った雅な世界は、日本の伝統文化の奥深さを存分に感じさせてくれました。今年もその時期がやって来て、昨日は妻に誘われ娘と孫を伴って午後から出かけて行きました。
犬寄までは翠小学校~柆野~犬寄と進みますが、特に柆野からの道は曲がりくねってまるで農道のような狭い道なのです。犬寄峠の四辻を96号線に入るとほどなく高い地産の家が見えてきます。車を道沿いに駐車して先に展示場を見学しました。昨日もひっきりなしに見学者が訪れていました。芳名録に記帳し中に入ると肌寒い山里の空気と一変し、床暖房の温かさが足元から伝わり、3つの部屋に所狭しと展示されている吊り雛や展示物を見学して回りました。ご案内役の人たちは皆さん手づくりの赤頭巾のような帽子を被って雰囲気を盛り上げていました。娘も孫たちも展示品の多さにビックリしていました。
帰りに高市さん宅へお邪魔しました。いつもの事ながら自宅の庭を開放されてお茶をいただきました。来訪者の中には知り人も多く、楽しくお喋りをしました。頭の上ではミツバチが盛んに飛び交って、来訪者の誰もが驚きながら頭を低くして巣箱の下を通っていました。
松浦さんご夫婦もそうですが、高市さんご夫婦に接する度に、歳をとったらこんな穏やかな生き方をしてみたいと思うのです。地域とともに、仲間とともに、そして楽しさとともに老いを向かえられたら最高ではないかと思うのです。これだけの展示ですから報われるために何がしかの入場料を取ったらどうかとも思うのですが、人に来ていただくことが何より嬉しいことだと、いつも笑って私たちを迎えてくれるのです。
娘や孫たちも束の間の休日をのんびりと過ごすことができました。犬寄に桜が咲くのはまだ1週間後ぐらいでしょうか。そのころにまた訪ねてみたいと妻と話しながら旧道を下り、国道56号線を下って合掌造りのそば吉で遅い昼食を食べました。そばも美味しく昨日はいい一日をのんびりと過ごし、久しぶりにリフレッシュさせてもらいました。
「中山か 双海かどっち 分からぬが くねった峠 目指して登る」
「山里に 雅の世界 現れて 年に一度の 心洗濯」
「早既に ミツバチ元気 飛び交って 客をもてなし 少し興奮」
「お茶と菓子 もてなし心 添えながら 訛り懐かし 峠の茶屋で」