shin-1さんの日記

○大寒の水

 冬の寒さが一番身体に堪える大寒の季節になると、朝顔を洗うのさえ水を使うのが億劫になります。でも主婦である妻は毎日朝・昼・晩と三食の炊事や後片付け、それに洗濯と、まあ水を使うことの多いこと、食器洗い機やハンドクリームが普及して昔のように手が荒れなくなったといいながら、それでも家族のためにマニュキアなどもせずせっせと働いてくれるのです。

 こんな日は早めに風呂を沸かしてと、勤めをしている妻のために最近は殊勝にも風呂を洗いガスボイラーのスイッチを入れてお湯を張る程度のお手伝いをしていますが、それとてもテレビに見入って忘れ、お湯をオーバーフローする事だってあるのです。一時が万事こんなことですが、妻は私をののしることもなく、笑顔で笑って毎日二人、多少のいさかいや喧嘩を私が一方的にするものの、まあ穏やかな老後を迎えているのです。


 1月20日から立春までを大寒というのでしょうが、、大寒に入り最近水が美味しいと感じています。冷蔵庫に入れなくても、蛇口から直接コップに汲み取って飲む水は最高で、外国のように水道水が飲めないことを思うと、日本に生まれて良かったとしみじみ思うのです。わが家ではこの頃を選んでお餅をつき、大寒の水に漬け込む習慣があります。昔は旧正月の餅つきは一族が集まり、大家族のために一俵以上の餅やかき餅を一日かけて賑やかについたものでした。


 つきあがった餅は2~3日すると大きな焼き物の瓶に入れられ、寒の水に漬け込まれ焼いたり煮たりしながら冬場の食料として沢山食べました。当時は粟やタカキビ、トウキビなどの雑穀餅が主で、白いもち米の餅などはそんなにありませんでしたが、母や祖母が火鉢の上で焼いてくれるかき餅やあられと共に子どもたちのささやかな楽しみでもありました。


 祖母から昔、「寒九の水」という話を聞いたような記憶があります。寒に入って9日目の水は薬になるからと、一升瓶に入れて保存していたのです。冷蔵庫もなかった昔のことだし、水のことゆえ腐りはしないかと心配しましたが、祖母の言うのには、この時期の水は雑菌や混ざり物が少ないので腐りにくいのだそうでした。今年は1月29日がその日なので、試しに「寒九の水」を汲み、飲んでみようと思っています。妻はそんなことを知ってか知らずでか手を赤くして、せっせと大寒の水で漬け込んだ水餅の水を2日に1回替えているようです。「お餅が焼けましたよ~」と台所から妻の呼ぶ声です。早速今朝は美味しい焼き餅を醤油と黄な粉にまぶして食べます。

  「大寒の 歯ぐき染み入る 水を飲む 何より馳走 喉を通りて」

  「大寒の 水に漬けたる 水変える 妻の手の甲 真っ赤になりて」

  「大寒の 水は薬と 逝きし祖母 言っていたこと 思い出しつつ」

  「蛇口水 飲める幸せ この国に 生まれたゆえの 幸せ感ず」

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