○腰に優しい船旅を選んで九州へ行ってよかった(その2)
関西汽船に勤める盟友浜田さんの忠告を受けて、ぎっくり腰の養生のため今回の九州福岡行きの講演旅行は松山~小倉フェリー便を選びました。浜田さんのいきな計らいで行きは1023、帰りは1023と覚えやすい予約番号を取っていただきました。本当は特1か特2くらいにすればいいのでしょうが、貧乏暮しが板についている私は、船などの乗り物やホテルなどはいつも最下位ランクをキープするのです。安いというのが一番ですが、最下位ランクに乗り合わせるどちらかといえば庶民派の人は話題も豊富で、何かにつけてすごく社会勉強になるのです。往路で隣に乗り合わせた若い夫婦は、最初から最後までいちゃつきまくって、抱き合いながら毛布の中で怪しい仕草をしていて気になって仕方がありませんでした。
片方には剃り込みを入れた一見やくざ風の兄ちゃんがビールを買い込み隣の布団の上でグイグイやっていました。車とともに乗船したので、明くる日の朝は酒気帯びではと心配するほどでしたが、隣の私にやたらと話しかけ、腰の具合が悪いのを心配してくれながら、「珍しいカバンじゃが中を見せてくれ」とか、「九州へ何をしに行くのか」とか、まあ賑やかな話に花が咲きました。
酒に酔ったお兄ちゃんをしり目に、せんべいのような布団の上に横たわりウトウトしていると、お兄ちゃんは自分の毛布まで私の体にかけてくれました。嬉しいことでした。船は明けやらぬ午前5時に小倉港に着きましたが、急ぐ旅でもないので7時まで船内休憩し、酒を飲んでぐっすり寝込んでいたお兄ちゃんを起こし、別れを告げて下船しました。
本当なら体力づくりのつもりで歩く船着き場から小倉駅までは、カバンもあるのでワンメーターながら運転手さんに断りを入れてタクシーに乗りました。小倉駅周辺は何度来ても通過するところなのですが、駅周辺はすっかり綺麗になって、動く歩道が長く続くなど大都会な並みの街なのです。何年か前駅に張られた観光ポスターを見て小倉城に行ったことなどを懐かしく思い出しました。
小倉駅から日豊本線、中津川行きの各駅停車に乗り込みました。行く先は築城と書いて「ついき」と読むのです。築上町の築城ですからついつい「ちくじょう」と読んでしまい、小倉から12駅目の「ついき」「ついき」と口ずさみながら車窓を眺めていました。
小さな「ついき」という駅に降りると、駅舎の反対側のプラットホームの傍に大きな看板が立っていました。インターネットで築上町を調べた時に乗っていた大楠の木をライトアップした写真看板で、その根元ででコンサートをしている風景でした。
駅舎の待合室には10人ほどが駅の用意した石油ストーブを囲んで雑談に講じていました。午前8時30分になるのを待って築城の公民館へ電話をかけ、早速係長さんが軽四箱バンで迎えに来ていただきましたが、私の出番は午後からなのに、何でこんなに朝早く来たのだろうと、大いに推察しながら、腰の具合を心配して図書室の隅にストーブを入れてもらい、のんびり過ごさせてもらいました。
「夜行船 眠り起きたら 九州路 腰の痛みに 寒さが染みる」
「似合ってる 俺にゃやっぱり 二等室 傍でやくざの 兄ちゃんイビキ」
「語呂合わせ 行きも帰りも 23 予約番号 予言どおりに」
「二等室 安い金額 更値引き 他人事ながら 赤字心配」