○ささやかな夢の缶詰
平成17年3月31をもって35年間務めた役所を退職してから、早いもので6年目を迎えています。役所に勤めていたころは1年に2回あって楽しみだった夏と冬のボーナス支給日も、毎月1回の給料日もなくなり、替わって1年に6回の年金支給日が新たに加わりました。何やかにやと天引きされて減る一方の年金暮らしは、わが家の大蔵大臣として財布を預かる妻としては予想以上に不安なようで、このままだとどうなるのだろうと思っているようです。
そんな老後の少し湿りがちな暮らしに少しでも笑顔を取り入れたいと、夫婦で相談して始めたことがあります。それはわが家では「夢の缶詰」と呼んでいる貯金箱作戦なのです。菅総理の今年の冬のボーナスが500万円と聞いて驚いたり羨ましがったりしても、菅総理からはそのはした金さえ分けてもらえないのですから、菅総理ならぬ缶詰総理などと夫婦二人で駄洒落をいいながら、毎年1年間少しだけ勘弁したはした金をせっせと缶詰型の貯金箱に入れているのです。
そして年末の20日前後に夫婦2人でこの缶詰の蓋を缶切りで開けるのです。昨日その作業を食事が終わり方付けが一段落したのを見計らって、「お父さん楽しみだね」と言う妻が缶切りを用意して切り始めました。こんなささやかな夢の缶詰でもドキドキするもので、缶を開けて逆さまにすると、中から大小様々なコインやお札が音を立てて出てきました。妻は「わあ凄い」と感嘆の声です。「あのお札はあの時俺が入れたものだ」何て想像しながらお札のしわを伸ばし、コインは1円、5円、10円、50円、100円、500円と種類別に積み重ねて行きました。
妻は小さな電卓とソロバンまで準備する周到さで、「500円が○○枚で○○円」などと計算していましたが、「はい今年のボーナスは締めて○○円」と大きな声で発表しました。勘弁して貯めたお金なので決して多い金額ではありませんが、私も妻も心から満足し「これで正月が越せる」などと大見栄を切りました。こんなはした金で正月が越せる訳はないのですが、それでも夢の缶詰はささやかな夢を与えてくれているのです。「今度松山に行ったついでに100円ショップで夢の缶詰用の貯金箱を買ってきてね」と妻に頼まれました。
一方私は夢の缶詰とは別に、郵便局で貰った郵便ポスト型の底穴開封式貯金箱を使っています。これは私のささやかな夢のために使うものです。パソコンやデジカメなどの故障の度に、開けて使っています。この貯金箱のお金で最初のデジカメも買いましたし、パソコンを購入する時も用立てました。この貯金箱はまだ開封せずに越年して、夢をどんどん膨らませようと思っています。他愛のない夢の缶詰やポスト貯金箱に夢を託す私たち夫婦はやはり勿体ないが分かる振るい人間なのでしょうか?。
「菅総理 ならぬ私は 缶総理 夢の缶詰 年末開封」
「正月が 越せると妻は 大見栄を 年金暮らし 何処か侘しく」
「昔から 塵も積もれば 山となる いろはカルタで 習ったとおり」
「来年は どんな缶詰 しようかな? 100円ショップ 買いに行こうか」