○警察本部からの講演依頼
何ヶ月か前、「こちら愛媛県警察本部少年課の○○ですが、若松さんですか」と、いきなり電話がかかってきました。警察から、しかも本部からの電話なので幾ら悪いことややましいことはしていないと思っても、「少年課」など聞こえず、「えっ、警察本部から私に何の用・・・・」と思って一瞬こわばりました。そして私のカンピューターはとっさに二つのことを思い出しました。一つは私自身が過去に振り込め詐欺未遂事件に出会ったこと、もう一つは自分の息子が警察官なので、要らぬ心配ですが「息子が何か・・・・」と思ったのです。
何年か前、わが家に突如として一本の電話がかかってきました。「あなたの息子さんが交通事故に遭いました。つきましては示談に100万円が必要です。」「息子さんは放心状態で電話に出られません。」などと、振り込め詐欺特有の電話なのです。人のことだと冷静になれるのですが、いざ自分の息子となると多少胸の高鳴りを覚えましたが、「お金は今すぐには用意できない。」「貯金通帳も印鑑も妻が持っている。」「妻はあいにく留守なので連絡しても夕方になる。」なとど引き伸ばし、一応電話を切り伊予署へ事の始終を報告して、再び犯人からの電話を待ちました。相手が「これはやばい」と悟ったのか、その後電話は二度とかかってこず、振り込め詐欺は未遂事件に終わりました。
要らぬ心配のもう一つは警察官をしている「息子がもしかして・・・」でした。最近は警察官の不祥事も全国では結構新聞やテレビ沙汰になっていて、息子を信じてはいるものの少し心が動揺したのはやはり、息子を思う優しい親心なのかも知れないのです。
結局少年課の○○さんからの電話の用件は、「研修会で講師をして欲しい」という依頼でした。私はこれまでにも各所の警察署や刑務所など、ありとあらゆる場所で講演を経験していますが、今回は警察ボランティアの方々に愛媛県武道館で話して欲しいということでした。
愛媛県武道館は愛媛県知事さんが、威信をかけて造った施設だけに、それはもう国際大会にも耐えれる立派なもので、まるでお城のような雰囲気です。私も2~3度立ち寄ったことはありますが、武道館で講演をするのは初めてとあって多少緊張していました。多分そのせいでしょうか、折角その日の午前中に作った自分のための講演シナリオを、プリントアウトしたにもかかわらず、プリンターに置き忘れるという大失態を演じてしまいました。でも講演シナリオがなくっても1時間余りの講演ですから、難なく事なきを得て無事終わりました。それにしても講演シナリオを忘れるなんて、妻曰く、「あなたも歳だ」と・・・・・。自分でも「う~ん、やはり歳だな」と妻の指摘に納得し、二人で大笑いをしてしまいました。
会場には顔見知りも多く、「これは困った。何まりは話せない」と思いましたが、いざ蓋を開けるとそんなことは忘れて、思いつくまま多少冗談交じりの話をさせてもらい、警察のお堅い講演ながら不見識にも、会場の皆さんを笑わせてしまいました。
昨晩はどういう風の吹き回しか、滅多に電話してこない警察官の息子から電話がかかってきました。妻から私に電話を変わり、事の始終を話しましたが、警察官の息子はやはりガードが固く仕事のことは一切話さず、「元気で頑張っている。」「正月にはひょっとしたら帰れるかも知れない。」と短い会話を交わし、年末調整のための生命保険の払い込み証明書を送って欲しいという言葉を残し電話を切りました。「警察」で明け暮れた一日でした。
「警察と 聞くと心に 胸騒ぎ 悪いことなど してないいうに」
「何年か 前に体験 詐欺未遂 経験したこと 脳裏に浮かぶ」
「もしかして 息子気遣う 親心 違う電話に ホッと胸なで」
「偶然に 息子の方から 電話入る 懐かし声に 妻はにこやか」