shin-1さんの日記

○何気ない一言②

 私がまだ若い時の話です。当時私は「日本一の公民館主事になりたい」と大きな夢を抱いて日夜努力していました。そんなやる気満々の想いが周りの人に伝わったのか、私は次第に頭角を現し、愛媛県公民館連絡協議会の主事部会長を負かされるまでになっていました。当時は条例設置公民館が県下に366館あり、それぞれの公民館に常勤や非常勤を含めるとかなりの数の公民館主事さんがいたのですから、私のボルテージはいやがうえにも高まって、様々なアイデアを駆使して日本一を目指した活動を開拓していました。私のやった自治公民館を場とした、「金儲けの公民館活動」や「夫婦学級」は全国的に有名になり、視察が訪れたり、NHK明るい農村で全国放送されたりしたものです。

 その頃愛教研という学校の先生の団体から、一本の電話がかかってきました。「愛教研で創立00年を記念して記念誌を発刊するので、そのメインに鼎談を計画しているので3人のメンバーの一人として是非お願いしたい」というものでした。聞けば県の校長会長さんと、地元大学教育学部長さん、それに私だというのです。「それは何が何でも格が違う」と思いましたが、向こう意気の荒い若気の至りで、位置もにもなく引き受けてしまったのです。

当日は文京会館の一室で半日もすし詰めにされて鼎談が行われました。

 その席上大学の教育学部長さんが唐突私に、「若松さんは何処の学府をご卒業ですか?」と言われました。私は「この大学の先生は人の値打ちを学歴で見ようとしている」と直感し、「はい公民館大学在学中です」と言ってしまいました。怪訝そうな顔をした先生は、「ほう、そんな大学何処にありました?」、「はい公民館大学は日本中何処にでもあります」とすかさず答えたのです。

 「連帯を育む教育のあり方」と題した座談会は滞りなく終わりました。私の話の内容が良かったのか悪かったのかは分かりませんが、理論を述べた先生は私の論理に感心したのか、帰り際丁重に頭を下げて私に謝られました。「私たち学者はどうも学歴で人の値打ちを見る悪い癖があり、冒頭あなたに失礼な話をしてしまいました。あなたの言うとおり、人の値打ちは何処の学校を出たかという学歴ではなく、学習歴だと思います。以後拳拳服膺肝に銘じます」と話されました。そのその時の座談模様は分厚い一冊の本にまとめられ、人間牧場の長い本棚の隅に置かれています。この本を見る度に「何気ない一言」の意味と先生の顔が思い浮かぶのです。何と私はその先生のいた大学で今は客員教授になって学生に「地域活性化論」を話しているのですから、世の中は分からないものです。


  「何処出てる 学歴判断 されるなら 俺は値打ちの ない人間だ」

  「学歴が ない俺出来る ことがある 学習歴は 積むこと可能」

  「学齢が ないのに何故に 大学で 球団立ちて 教える不思議」

  「公民館 大学在学 今もなお 故に恩人 恩を返さにゃ」

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