shin-1さんの日記

○灰が届く

 人間牧場は今朝からあられ交じりの雨で、折角の休日作業を目論んでいましたのに残念ながら行くことが出来ません。今日の作業は囲炉裏の中に灰を入れる予定でした。仲間のAさんが砥部焼きの窯元から釉薬に使う木灰を調達して持参してくれましたので、朝から囲炉裏話に花が咲きました。Aさんは自動車の塗装をする会社の社長さんですが、アウトドアーに長けていて150人もの会員を抱え、様々な活動を長年にわたって手広くやっています。出来た人で痒い所に手が届くような気配りの人です。

 彼から少しショッキングな話を聞きました。50歳を超えた彼には病院に勤める奥さんと車屋の後を継いでる息子さんがいます。普通だと誰もがうらやむ安定した家庭だとお見受けするのですが、息子の自立のために車屋は息子さんにまかせ、奥さんを一日も早く楽にしてあげたいと自立の道を歩み始めました。

 彼が長年温めていた燻製業を生業にしたいというのです。私は正直驚きました。魚や肉の燻製はアウトドアー派なら誰もが憧れるものなのですが、いくら燻製のとりこになったとはいえそれで飯が喰えると思えませんから、他の人と同様私も反対しました。でも彼の決意は固く既に様々な試作品を作って、様々なジャンルの人の意見を聴いているそうです。「人間にはやりたいことがあるしやるべき時期がある」と口角泡を飛ばしてまくし立てるのです。「若松さんあなたの人間牧場への取り組みと同じですよ」とも言われました。

 私は彼に真剣に話しました。私と彼との立場の違いなどを話しましたが結局は固い決意に押されてしまいました。私は「あなたにはあなたのやりたいことがあるでしょう。それも自由です。でも奥さんと息子さんを金銭的に巻き込んで悲劇にならないように」と付け加えました。彼の姿を見ているとかつての自分のような錯覚にとらわれました。彼が試作したアメノウオの燻製を食べてみました。確かに美味しいのですが、これが売れ、これで儲け、これで飯が喰えるようになるためにはそれ相当の覚悟が要るでしょう。彼の想いの強さに大きな拍手を送ります。でも人間って不思議です。今の暮らしで十分満足すればよいのに、敢えて苦しい回り道をするのですから・・・・・・。向こう見ずとも取れる彼の目は輝いていました。

  「この灰の元は一体何なのか思い巡らせ囲炉裏の周りに」

  「止めとけと誰もが忠告する仕事敢えて乗り出す男の頑固」

  「損得で計れぬあんたを見習って言われてみれば俺も大馬鹿」

  「少しだけ俺に似たのか孫仕草喜ぶべきか悲しむべきか」

 

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