「人間牧場」に秋風が吹き始めました。瀬戸内海を見下ろす小高い丘の上にある「 水平線の家」のウッドデッキに出て空を見ると、地球が丸いと実感するような空には、いつの間にか入道雲に変わって秋雲が漂っています。虫の声、行き交うトンボ全てが絵になる光景です。肌に触れるそよ風も心地よく、季節の移ろいを感じます。
「人間牧場」構想に基づいて4月9日に用地に入り、草を刈ったのが5ヶ月前の4月9日でした。母が世話をしていたみかん畑は、母が逝ったり私の仕事がせわしかったりで10年も手入れをしなかったため、分け入るのも困難なほど荒れに荒れて、草刈機やチエンソーなどの文明の利器の力を借りねばならないほどでした。この日のために妻が買ってくれた麦藁帽子と地下足袋といういでたちで草を刈り、木を切り倒す作業は難航しました。若いと思っていた体力も還暦を迎えて落ちており、気力と体力の差を実感しつつ、晴耕雨読の晴耕を心がけ、弁当とお茶持参で悪戦苦闘しました。特に重労働だったのは、切り倒した雑木の枝葉の処分で、消防署に訳を言って現地で焼却処分にしました。地球温暖化など環境を唱える私としては少々心が痛みましたが、目をつぶって天を焦がすほどの焚き火を、噴出す汗をぬぐいながらたった一人でこなしました。大きな木は人間牧場が完成したら、炭や囲炉裏火に使いたいと一箇所に積み上げましたが、この木が後の草刈の邪魔になったことは、後の祭りでした。
それでも、自然は偉いもので、一週間もすると青草が一面を覆い、美的原風景を演出してくれました。