shin-1さんの日記

○モグラの穴

双海町閏住という地区の入り口にまるでモグラの穴のようなトンネルがありました。縦に長いかまぼこのような形をして、どこかノスタルジックな雰囲気を漂わせていました。今や県下でも有名な菜の花畑の隅にあるものですから、「向こうに何があるのだろう」と花見に来た人は珍しがって通っていました。予讃線海岸周りの線路の下をくぐって向こうに出るだけのトンネルなのですが、その道を進むと20数戸の閏住という地区へ通じるのです。

 このトンネルは乗用車がやっというどちらかというと穴的存在で、消防車も救急車も通行できず、それらの車や運搬用車はこれまた細い道を踏切を迂回して行かねばならないのです。そのため閏住地区の人は長年かなりの難儀を強いられてきました。いわば地区の人の悲願はこのトンネルを大きくすることでした。

 その願いが国や県、市を動かして2年前に工事が始まりました。何せ上を毎日列車が走っているのですから、列車を通行止めにして工事をすることが出来ないため、掘っては固めるという作業を繰り返し、「何でそんなに長くかかるのだろう」と素人の私たちが思うほど長い工事でした。その間閏住の菜の花は一部柵が設けられて立ち入り禁止となり美観を損ねていましたが、昨年末にやっと工事が完成したようです。

 今はまだまるでコンクリートの塊といった違和感があってトンネルの周りに菜の花が咲いていた昔のトンネルとは似て似つかぬ風貌をしていますが、そのうち周辺の景色にマッチすることでしょう。

 寒い寒いと思っていた今年の冬も少しずつ寒さもゆるんで、閏住の菜の花は日毎に黄色い色を増しつつあり、気の早い観光客は車を止め足を止めて花見を楽しんでいるようです。私も一昨日大洲市長浜町豊茂へ行く途中そこを取り掛かりましたし、昨日も人間牧場へ行く時通りましたが、車の窓を開けるとどこか懐かしい菜の花の香りが潮風の磯の香りとマッチして、春間近かを感じさせてくれました。

 時折通るまるでマッチ箱のような一両編成のジーゼルカーもどこか懐かしい印象が感じられ、熱心なカメラマンは列車の時刻表を頼りにシャッタースポットにカメラを固定して、この寒空だというのに列車の来るのを日がな一日待っているようです。

 昨日もそうでしたが、花が咲き始めると困った事に花の中に入って写真を撮る不届き者が必ず出てきます。その人たちは鼻を踏み潰し自分さえよければいいという感じで写真に納まり帰って行くのですが、折角育てた菜の花を踏み潰されるのは何とも心が痛みます。

 私が考えた横たわる看板は当時すっかり有名になりました。この閏住地区の人から相談を受け、職員でお立ち台を作りました。そうすれば花の中へ入らなくてもすむし、撮影した写真にはさりげなく「しずむ夕日が立ちどまる町」などという町のキャッチフレーズが写る様にしたのです。これは大受けでしたし全国放送にも乗ったほど有名になったものです。もう間もなくそのお立ち台も設置されるでしょうが、遅きに失しないようして欲しいと願っています。

 余談な話ですが、菜の花の蕾は塩漬けにすると美味しい漬物になります。折角育てた菜の花の蕾も随分盗難に会い悔しい思いを何度もしました。そんな折、相談を受けた私は「消毒中につきご注意」などと看板を作って立て、これも見事なアイディアとして褒められてものです。菜の花の思い出は沢山ありますが、これも逸話として語り継ぐべき落伍の落ちネタなのです。

  「トンネルが 出来て菜の花 すっきりと 通る列車も どこか他所行き」

  「花の中 入らないでと 注意する うそぶく女 化粧濃いくて」

  「花咲けば 隣の店が 繁盛す 目の付け所 大したものだ」

  「看板に くじらと書いた 店に入る 女店主は 目(女)(雌)くじらなのか?」 

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