shin-1さんの日記

○蚊がブーンと飛ぶから文化

 私の友人に福岡県柳川の広松伝さんという人がいました。「いました」と過去形で書きましたが広松さんは先年病に倒れ帰らぬ人となりました。まちづくり人なら誰でも知っている伝説の人ですが、掘割下りで有名な柳川の生命ともいわれる堀割を残す運動に携わった広松さんは、度々愛媛県にも来られました。

 佐多岬の青石文化を考えるシンポジウムで同じステージに上がりましたが、朴訥な語り口は燻し銀の風格を漂わせていました。夜なべ談義ではめっぽう酒が強くて、お互い夜中まで飲んでいました。酔うほどに文化論に熱がこもり面白い話をしたことを覚えています。

 「若松さんおらの街は文化がある」というのです。「そりゃあそうでしょう柳川3万石んぽ城下町、北原白秋のふるさと、掘割下り、柳川鍋だってある有名なところですから」と私が知ったかぶりで柳川を評すると、彼が「違う違う、柳川には堀がたくさんあってこの堀に毎年夏になると蚊がブンブン飛部のです。だからブーン蚊なのです」と思わず吹き出してしまうようなジョークを返しました。その時は酒によって気付きませんでしたが、この言葉は今になって思えば「柳川の文化は掘割なしでは考えられない」と言ったのだと思いました。

 私たちの仲間もそろそろ仕上げの年齢、今年も何人かの仲間が天国へ召されたので遺族の方から「喪中につき年末年始のごあいさつは遠慮します」とはがきが届くようになりました。そのはがきを見ながら一人一人の顔やエピソードを思い出しています。天国でも私のことを思い出してくれてるかなと、思わず天井を見上げました。

 柳川の広割といえば水、水といえばメダカの学校の川口壽雄校長先生も天国行きの列車に乗って帰らぬ旅に出ました。昨年私がチエンソーで足を切ったとき偶然にも同じ病院に入院していた病院着の姿が今も頭から離れません。

 人は何処から来て何処へ行くのでしょう。広松さんや川口さんの分までもう少しこの世の中で働かせてください。あと25年したらそのうち参ります。

  「喪中につきそんなハガキが届く度思い出すのは楽し日々のみ」

  「死ぬ死ぬと言ってる人が長生きし元気売り物急に亡くなる」

  「無事退院兄嫁電話弾む声酒を飲むぞと大いに威張る」

  「腰曲がる頭白髪で歳なんぼ聞かれたけれど答えすべなし」

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