〇度を越したことは長く続かない
私が初めてアルコールを口にしたのは高校の卒業式の日でした。勿論飲酒は年齢が20歳からと決まっていることは承知していましたので、明らかに法律を破る行為でした。宇和島水産高校を卒業し下宿を引き払って双海町へ帰る日、下宿のおばちゃんが下宿の一室でお別れパーティを開いてくれました。おばちゃんは卒業式に列席したわが母親と後輩たちの前で、「進ちゃんは今日の卒業式で、一日も休まず学校に通って皆勤賞、よく勉強したので優等賞、学校の模範となったので産業教育振興中央会長賞の3つも賞状を貰い、こんな嬉しいことはない。明日から社会人になるのでビールで乾杯しよう」と用意したコップにビールを注いでくれました。
ほろ苦いビールは喉を通り胃袋に達しました。そしてたったコップ1杯のビールで酔ってしまい、帰るに帰れず下宿に泊まらせてもらい、あくる日帰郷となりました。帰郷すると待ち構えていたかのように直ぐに青年団に入団し、漁師の仕事をしながら活動にのめり込みましたが、毎晩のように酒を呑んではディスカッション、レクリェーションをするものの、酒は一向に上達せず飲んでは吐き、吐いては飲むの連続でしたが、「度を越したことは長く続かない」のことわざ通り、酒と寝不足がたたり、ある時意識不明となり、3ヵ月の長期入院となり、そのことが縁で、重労働の漁師を諦め役場に勤めることになったのですから人生は分からないものです。
その後紆余曲折を経て少し強くなり酒席で楽しい思いもしましたが、58歳の時再び病気となりきっぱりと酒を断ちました。あれから21年が経ちましたが、もう恐らく体内からアルコールの痕跡は完全に消えたものと思われます。今年のように連日猛暑日が続くとビールの一杯も飲みたくなるものでしょうが、禁酒の誓いを破ることもなく人生を終えれそうです。そうそう私の友だちの中には癌になっても脳梗塞になっても「酒を止めるくらいなら死んだ方がましだ」と豪語し、本当に死んでしまった者もいます。ご用心ご用心。