〇イタドリの思い出
私は昭和19年生まれです。戦後の貧しい時代に少年時代を過ごしたので、空腹を紛らわすためサツマイモなど色々な物を食べましたが、今の子どもたちに話しても、「えっ、こんな物食べられるの?」と言われる物も沢山食べました。中でもイタドリはその代表格で、春の芽吹きの頃になると私たち子どもは、方言名で「イタンポ」と言うイタドリを沢山食べました。
山に入ると、食べられず残されたイタドリが夏の間に枝葉を伸ばし、親木となって枯れますが、その枯れ木を目印にして山に入ると、根元からタケノコのように若いイタンポの芽が顔を出すのです。早い者勝ちなので自分だけのとっておきの場所でイタンポを探し、何本か折って持ち帰りました。皮を剥いて食べますが、時には塩をつけて食べたりもしました。
酸っぱいだけで美味しいとは思いませんでしたが、それでも子どもたちは得意顔になって食べました。食べ残したイタンポは節を真ん中にして切り分け、両方に包丁で八等分程の切れ目を入れ、水を張ったバケツの中に入れてしばらくすると、切れ目毎にイタンポが反り返り、それは見事な水車ができるのです。細丸い青竹を真ん中に突き刺して、水道の蛇口から出る水に当てると、水車となって、立派な遊び道具に変身しました。
漏れ聞けば、高知県ではこのイタドリは山菜の王様とも呼ばれ、皮を剥いで軽く茹でて塩漬けにし保存するのだそうですが、他の山菜とともに皿鉢料理の上に調理して盛られたイタドリは、立派な食材として食べられているようです。わが家でも年に一回程度、イタンポを山から持ち帰り、皮を剥いて軽く茹で、油炒めして美味しく食べています。今年もそろそろやってみようと思っています。飽食の時代、何もそこまでと言われそうです。
「春が来た 野山に山菜 あれやこれ 目下はツワブキ そのうちタケノコ」
「物のない 時代に少年 時代生き あれこれ食べた お陰で元気」
「イタンポに 塩までつけて 食べていた 水車作って 遊びも工夫」
「高知では イタドリ山菜 王者とか 塩漬け加工 皿鉢色どる」