人間牧場

〇野良の節句働き

 こちらの古い頃からの言い伝えに、「野良の節句働き」というのがあります。日ごろは遊んでばかりいるのに、お節句という特別な日にだけ仕事をして目立ちたがる変わり者のことを言うようですが、昔と違って最近は4月4日のお節句風習も、クリスマスやハロウィン、バレンタインデーなどの洋風行事にその座を奪われ、すっかり忘れ去られた存在になってしまいました。

 私たちが子どもの頃は、「お節句」と言えば、とても楽しみな伝統行事でした。貧しくて日ごろは贅沢もできませんでしたが、お節句には母が前の晩からお花見弁当を作ってくれ、引き出しのような箱ご膳に、巻きずしやおかずを入れて、仲の良い友だちと野山に作った陣地隠れ家へ行き、遊びながら滅多に食べないおご馳走に舌鼓を打ちました。

 昨日はお節句でした。親父が亡くなるまでは親父が節句弁当を楽しみにしていたこともあり、わが家では父のために節句弁当を作っていましたが、昨日は節句弁当を作って夕方、この春の異動で大洲へ転勤になった、独り身の息子の所へ持って行ってやりました。昨日は私も節句など意識せず、まるで「野良の節句働き」のように野良仕事に精を出したので、殊更に節句弁当が美味しく感じられました。

「洋風の 行事にその座 奪われて ことさら節句 休む人なく」

「野良仕事 いつもの通り やってたら 近所の人が ひゃかし言葉」

「手作りの 節句弁当 末っ子に 届ける妻の 愛情感心」

「お節句の 思い出母の 顔浮かぶ 懐かしきかな 少年の頃」

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