〇山折哲雄さんの教え
先日友人の浜田さんから一通のメールが届きました。詳細はさて置いて、元日本国際文化センター所長だった夕焼け京都塾塾頭の、宗教哲学者山折哲雄さんの言った言葉のようでした。山折さんとはかつてわが町の夕日のミュージアムに来られた折、二人だけで対談したこともあるし、新聞や雑誌、著書等を読んで少なからず影響を受けている偉い先生です。加えて「夕焼け京都塾」という名前に引かれ浜田さんのメールを何度も読み返し、使い古しの封筒をくずかごから取り出して裏の余白にメモしました。
メールには二つのことが書かれていました。ひとつは①出前の精神、②手づくりの気分、③身銭を切る覚悟について、もう一つは①自由に語り合える空間・広場をつくる、②若い世代に既得権益を譲る心構えについてでした。これらの教えを自分のこれまでの人生の生き方に当てはめて振り返れば、いちいち最もなことばかりで、すっかり納得してしまいました。私は自由に語り合える空間として「私設公民館・煙会所」を、青年の船で建国二百年のアメリカに行った昭和51年の明くる年、自宅の庭に手造りしました。僅か4畳半の囲炉裏を切った小さくて粗末な施設ですが、煙会所は沢山の人を全国から引き寄せたばかりでなく、双海町の夕日によるまちづくりの拠点ともなったのです。また訪れた青年たちに大きな影響を与えたのか、すでに青森県三戸郡倉石村の八心堂から鹿児島県奄美大島瀬戸内町の縁開所まで、実に17ヶ所も分家が出来ているのですから驚きです。
約1千万円の身銭を切って10年前、瀬戸内海を一望できる標高130mの山に「私的研修施設・人間牧場」を造りました。もし私が人間牧場を造っていなかったら、退職後の10年はこうもリアルに、こうも充実してはいなかったのではないかと、しみじみ思うこの頃です。出前の精神であちらこちらに出かけては人の和みをつくり、恩返しのつもりで様々なまちづくりにボランティア参加していることも、山折さんの教えに近い感じがしています。若い世代に既得権益を譲ることも既に行なっていて、ただ今身辺整理といったところです。浜田さんからの一通のメールは、私のこれまでとこれからの生き方を説明するには十分過ぎるほどの教えです。「これまでの生き方がこれからの人生を決めるのでではなく、これからの生き方がこれまでの人生を決める」気概で、これからも報徳・恩返しを肝に銘じたいと思っています。
「一通の メール友より 私宛 納得しつつ メモ紙書いて」
「世の中にゃ 達人多く いるものと 自分未熟さ 振り返りつつ」
「身銭切る 覚悟なければ 何事も 前に進まぬ これから先も」
「欲捨てて 既得権益 譲ろうと あれやこれやと 画策最中」