人間牧場

〇人事異動の季節

 春は人事異動の季節です。私も26歳から60歳まで35年間、地元の役場に勤めていたので、内示の出るこの頃になると職場でもそのことが話題になり、何となくソワソワしたものでした。私は自分で変わりたいと思ったことは一度もなく、自己申告書に「今のまま」と書くことを貫きました。それでも社会教育から13年目に産業課へ、4年目に企画調整室へ、9年目に地域振興課へ異動して10年間勤めて退職し、最後2年間は特別職の教育長で、合併を機に35年間の地方公務員生活を終えました。

 特別職を除けば私の人事異動は僅か3回で、4つの職場しか経験したことがないのですから驚きです。まあ田舎の役場は異動で外に出ることも殆どないので、1階から2階とか、隣の部屋への異動だし、他課といっても気心の知れた人ばかりなので、異動しても直ぐに職場に馴れて、昔からいるような顔つきで仕事をこなしていたようです。
 しかし職員の中には1年とか2年で頻繁に異動させられる人もいて、やれ栄転だの左遷だのとありもしない噂話をあれやこれやと言い合っていたようです。ほんの少しの間人事異動の原案を作る課にいて、原案を作ったことがありますが、田舎の役場は首長が変わると人事にまでそのことが色濃く反映されるのですから、あおりで異動させられた職員はたまったものではありません。

 異動は一人の人間の人生まで変えてしまうほど重要なものです。いくら優秀な人材でも、異動は昨日まで大工さんだった人が明くる日から、左官さんをしなければならなくなるほどの大きな変化です。その仕事が肌に合わずこなせないと、駄目職員のレッテルを貼られてしまうのですから可哀想で、そのしがらみに耐えられなくなり、思い悩んで心の病にかかる人も少なくないのです。
 人事は短期異動と中期異動、それに長期異動がありますが、最近では概ね3年位での異動が多いようです。私は4年間の産業課を除けば社会教育13年、企画調整9年、まちづくり10年とかなり長く同じ仕事をさせてもらったことで、能力以上の成果を挙げることができました。適材適所だったかどうかは今も不明ですが、異動を新たなチャレンジへのチャンスだと思えば、意味のあることです。首長に雇われているのではなく、市民や県民に雇われていることをしっかり肝に、頑張って欲しいものです。

  「昨日今日 あちらこちらの 職場では 内示出たよと そっと連絡」

  「栄転や 左遷は人が 決めること 異動したなら 思い直して」

  「楽しみに していた異動 空振りで 栄転もなく 沈む人あり」

  「新聞の 人事異動の 末尾見る ひっそり退職 名前見つけて」

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