〇彼岸花の咲く頃
汗疹のできるほどの残暑もいつしか遠のいて、朝晩は少し肌寒ささえ覚えるようになりました。北海道の友人たちから、早くも朝晩ストーブを入れていると、風の便りが届いて、北と南では気温が随分違うものだと南北に細長い日本列島を垣間見ています。昨日列車で愛媛・香川・岡山を旅しましたが、沿線田圃の周りには、それは鮮やかな真っ赤な彼岸花が、今が盛りとばかりに咲き誇って、田舎の風情を醸していました。
彼岸花はその名の通り、彼岸頃に咲きますが、今年の彼岸の入りは9月20日、彼岸明けは9月26日なので、まさに今が一番見ごろな時期です。最近は白い彼岸花、黄色い彼岸花、ピンクの彼岸花もあちらこちらでよく見かけるようになりましたが、やはり彼岸花の代表格は何といっても、燃えるように真っ赤な色をしたもののようです。彼岸花は別名が千を越えるといわれるほどあり、曼珠沙華、死人花、幽霊花、キツネノタイマツなどがよく知られていて、そのけばけばしさがゆえに、また毒性があったり、墓地に咲くことから必ずしもいいイメージの花ではないようです。
昨日わが家の裏山の斜面に彼岸花の一株を見つけました。毎年この時期に咲きますが「葉見ず花見ず」という別名もあって、花の咲く時期には葉っぱがなく、葉の時期には花がない不思議な花です。彼岸花をよく見ると、到底人間では作れないほど精巧にできていて、自然が作り上げた最高の傑作だと、いつも感心をしつつしゃがみ込んで見ます。まるで夏の夜の線香花火にも似ているような気もするのです。
「彼岸花 車窓あちこち あぜ道に 真っ赤に咲いて 季節移ろう」
「彼岸花 毒花ゆえに いい名前 貰いもせずに 片身を狭く」
「彼岸花 色々あるが やはり赤 存在誇示し 彼岸中日」
「人間じゃ この傑作は 作れない 思えるほどに 精巧模様」