〇でっかい鯛が届く
わが家は代々漁師の家で、私が子どものころは親父が主に鯛網を営んでいたし、私自身も若い頃漁師をしていたので、大きな鯛を見ても別に驚くことはありませんが、親父が70歳を機に漁師を廃業して漁船・漁具を全て処分した25年前から、魚は買うもの・貰うものとなりました。それでも親類に漁師さんが多いののと、私が魚が大好きなこともあって、魚が食卓に上らない日は殆どないくらい、魚を沢山食べて元気に暮らしているのです。
そんなわが家へお盆の時期でもあるのか、親類から鱧が一箱届いたのを皮切りに、鱧の骨切りしたものや、鯛が2度にわたって届きました。従兄弟の組合長から貰った鱧の骨切りしたものは別として、鯛はその都度私の手を煩わせて捌きましたが、一昨日息子の友人から届いた鯛は別格で、7キロ以上もある大きなものゆえに、流石の私もその処理に悪戦苦闘する羽目となりました。
大きな鯛の皮目にはとても大きな鱗が、まるで鎧のようにびっしりついています。その鱗を取るのは一苦労で、市販の鱗取りで丁寧に鱗を引くのですが、鱗は容赦なく四方八方に飛び散り、肌の露出した部分や流し台のあちこちにへばりついて、乾くと中々取りにくいのです。そのため鱗を引き終わると一度丹念にそこら辺や肌の掃除をして水で流さなければなりません。その後腹に包丁を入れて内臓を取り出し、あらかじめ用意していた捨ててもいい買い物袋に入れるのです。sらにエラを取り除き終わると軽く水洗いしてまな板に乗せ、首の部分に出刃包丁を入れ、頭と胴体を切り離すのですが、背骨はでっかくて、余程力を入れないと切り取るのは難しいようです。更に難しいのは頭を半分に割ることです。これ程の鯛になると頭はでっかくて、おいそれとは割れないため、まるで日曜大工のように入れた包丁の上を、専用の少し大きめの金槌で叩くのですが、手がしびれるほど力を入れなければなりません。
次に身の部分を3枚に下ろし、ヒハラを切り離して骨も出刃包丁を打ち下ろして、食べやすく煮やすいように小切りし、最後は尾びれを切り離します。昔は鯛を料理した証として鯛の尾びれを台所の柱に貼り付けたものですが、今は不衛生なのでその名残もなくなったようです。頭や腹身や骨は通称あらと呼んでいますが、鯛のあら煮は最高です。しかし3板に下ろす調理もすっかり上手くなったため、背骨には身が殆どついてないと、若嫁や妻が嘆く始末です。あらと身を水洗いしてタッパに入れると表面をサランラップでラップしできるだけ空気と冷風に触れないようにして、冷蔵庫を片付けて入れ、残飯を片付けたり流し台や使った包丁等の道具をタワシで水洗いして一段落ですが、いやはや魚の調理には時間と力が要るものです。
一昨日の夕方は家族全員が美味しい鯛の刺身を「美味しい、美味しい」といって、堪能するほど食べました。今夜はチルドに保管した残りの片身をづけにして、づけ丼でいただきます。熱いご飯にづけを乗せ、その上にもみ海苔と薬味をかけ、産みたて卵を落とし、山葵を溶いたづけタレをかけてかき混ぜながら食べます。づけ丼は漁師さんのまかないご飯ですが、南予では鯛飯とも日向飯ともいわれる郷土料理です。ああ田舎の暮らしは幸せな日々です。
「手がしなる 程の大きさ 鯛届く 三枚おろす 私の仕事」
「包丁と 金槌使い 頭割る 兜煮にして コラーゲン食う」
「づけ丼は 漁師まかない 料理にて 荒々しいが これまた美味い」
「鯛調理 身は勿論で 骨までも 猫食べたよう 美味い美味いと」