人間牧場

〇夷険一節(いけんいっせつ)

 人間牧場を造ってから早いもので、9年目の夏を迎えています。5年計画で次々造った諸施設も年々充実し、すっかり自然に溶け込んできましたが、ほころびも目立ち始め、水平線の家やロケーション風呂の外壁はキツツキ(赤ゲラ)の被害に遭って、あちらこちらに穴が空いていますし、塗ったペンキもこの8年間で少し色あせてきました。このままほおっておくこともできず、近々無色系のペンキを塗ろうと息子と相談していますが、自分たちでこの作業を安上がりに進めるため、足場をかけずに梯子を使って塗ろうと目論んでいます。ペンキ代も要ることから多少二の足を踏んでいるのです。

 人間牧場は私のわがままな人生の最後のわがままで造ったものなので、施設の維持管理や保守作業を誰に助けを求めるでもなく、一人でやらなければなりません。「草刈り作業くらいは手伝うよ!!」と仲間は呑み会や研修会の度に言ってくれますが、手伝いに来る人は年輪塾生第1号の浜田久男さんくらいなもです。浜田さんは年に何回か連絡を取り合って,水平線の家の掃除やワックス塗りに、「修行」と称してやって来ます。今では阿吽の呼吸そっ琢で、かゆい所に手が届くほど手伝ってくれるのです。
 人間牧場を造る時、煙会所で散々迷惑をかけた妻は、「造るのはいいが私を巻き込まないで!!」と釘を刺されているので、忙しい妻を巻き込むことはできません。幸い人間牧場を設計した息子が狸が石を投げるくらいに時々手伝ってくれますが、「人間牧場は将来お前のものだ」と言いつつ、余り当てにしていないのです。

 「夷険一節(いけんいっせつ)」という言葉があります。自分の運命が平穏であろうと険しく厳しいものであろうと、節操を変えずその職責を全うする、つまり物事をなすに当たって志がしっかりしていることのようですが、少なくとも人間牧場構想の実現は誰がどうであれ、私が志を持って始めたことなので、人を当てにせず、しっかりとやって行きたいと思っています。
 4年前千本桜の森づくり事業で人間牧場の隅に植えた標準木の枝垂桜も根を張り大きく成長し始めています。また水平線の家の隅に植えもしないのに雑草の如く生えた2本の杉の木も、家の屋根を越えるまでに伸びました。この8年間、桜や杉の木に比べ私の成長はどうだったのだろうかと思って考えますが、いささか心もとない感じもするのです。これから先も桜や杉の木に負けないよう進化したいものです。

  「難しい 夷険一節 服膺し これから先も 進化の道を」

  「杉・桜 日々成長の 足跡が 私はどうか 負けているかも」

  「八年も 経つと施設は 老化する しっかりメンテ 自分の力で」

  「部屋の中 並んだ本が 日焼けする 自然の紫外 意外ときつい」 

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