○イサバの調理
昨日の昼ころ、漁師をしている親類の伯父さんから電話が入り、今年は時化が続いて年末以来一度しか漁に出ていない話を聞きました。私もかつて若いころ7年間漁師をしていたので、冬の時化が続くと漁にも出られず、財布の中身が心配な話は、他人事ではないと思いました。伯父さんは80歳を超えてもなお元気で息子と一緒に船に乗っていますが、そろそろ船を降りる年齢になったと寂しい心情を吐露していました。
そのたった一度だけ漁に出て漁獲した、イサバという鱶の一種である魚を船の水槽に生かしているので、取りに来いというので午後3時に系四トラックで取りに行きました。漁師は気が早いので行くと既にイサバは〆られて発泡スチロールのトロ箱に入れられていました。鱶やサメ類は生命力が強く、〆て尻尾を切り落とし、首を切っているのも関わらずトロ箱の中で動き回って暴れていました。
寒くても仕方がないと思いながら、妻の割烹着を着て早速裏の屋外炊事場で調理を始めました。かなり広いまな板なのに、有に1メートルもあるイサバはまな板をはみ出し、頭を落とし出刃包丁で悪戦苦闘しながら三枚におろしました。頭も内臓もヒレも骨も皮もビニール袋に入れて生ごみ箱へ処分しましたが、皮との間の赤味を帯びた身は透き通るような桜色で、とても美味しそうな感じがしました。
早速魚が大好きという友人二人に小切りにしてお裾分けをすることにしました。グロテスクな斑点模様のある鱶ながら、1週間も船の水槽で活かしていたため身は引き締まり、刺身にして食べましたが、見た目以上の美味しさでした。冬のこのころになるとスーパーなどに出回る物は別として、地物の魚を食べる機会が極端に少なくなります。特に刺身にする魚などは中々手に入らないのです。お陰で昨日はご馳走のような食卓でした。
イサバの身は今晩は湯ざらしと天婦羅にして食べる予定です。湯ざらしはミガラシをつけて食べると絶品だし、天婦羅も熱々をおろし大根を入れた天つゆで食べると食が進みます。最近はミツバチの井上師匠から譲ってもらったモチムギを入れた、麦ご飯がわが家の定番となって、素食ながら田舎の暮らしを楽しんでいます。冬の寒さに会った野菜もしっかりと味わっています。
「鱶なのに イサバと名前 ついている これが絶品 ゲテモノ食いだ」
「上等な 魚は銭が 高いだけ 料理一つで ほらこの通り」
「今晩は 湯ざらし加え 天婦羅で 冬の食卓 彩添えて」
「幼ころ いやだ麦飯 思ったが 今は美食と 思って食べる」