○唐辛子のおすそ分け
私の家の放任園を友人稲葉さんに借りてもらって早くも3年目を迎えました。砥部町で自動車の修理工場を経営する稲葉さんは、休みになれば毎日のようにその畑に通い、周りの人が感心するような努力で、ものの見事に畑を開墾してタマネギやスイカ、ジャガイモなどの試作を試みて、相応の成果を挙げているのです。稲葉さんの農作業を見ていると、人間牧場を耕している私のようなずぼらな人間が擬似農民に見えてきて恥ずかしい思いがするのです。
稲葉さんは不思議な人で、下灘の港が見える場所に孟宗竹の柱を立てて鯉幟をあげたり、石を運んで石垣イチゴに挑戦したり、私が考え付かないようなことをやって驚かせています。また普通スイカを作ってカラスやイノシシに食べられないようにする場合、スイカ畑の周囲を網や波型トタンで囲うのですが、稲葉さんは直径50センチくらいのシャッポを作り、スイカのある場所を隠す方法を考案したり、全体を開墾するのではなくドラム缶くらいの植える部分を開墾して、土作りをして作付けする独特の方法を取り入れて実践しているのです。
さすがに、理想と現実のギャップは大きいようで、イノシシやカラスの洗礼を何度も受けたようですが、失敗にもめげずせっせと汗を流しているのです。今朝食事をしているとわが家へ稲葉さんがやって来ました。唐辛子が出来たので食べて欲しいと言うのです。見れば唐辛子を綺麗にラッピングしていました。稲葉さんはゆくゆくは収穫した野菜を販売して生計を立てたいと、素人の私から考えれば夢のようなことを話しています。「遊びの農業亜楽しいが飯お食う農業は苦しい」と常々分かったような説教をしているものの、ここまでこだわった商品開発をしていることに内心驚きました。
今朝聞いた稲葉さんの話によると、青森産のホワイト六片というニンニクを作付けするので、種芋を1万5千円も出して取り寄せたというのです。私は少し呆れたような感じがしましたが、ニンニクのことをしっかりと勉強した薀蓄を、わが家の玄関先で20分ばかし聞かされましたが、本気で取り組んでいる姿にびっくりしてしました。
今年から石久保という所の荒れた農地を借り受けてジャガイモを増産するための作業をしているようで、先日はその作業中に顔を蜂に刺され、我が家に飛び込んでアロエや妻特製のジュウヤク焼酎をつけて、難を逃れたようです。夢を語る人は素晴らしいし、夢を形にするために汗をかいている人はもっと素晴らしく、稲葉さんの姿に大きな拍手を送りたいと思いました。
余談ですが、先日伊予商工会議所で開かれた青色申告会の講演会に、稲葉さんは友人に誘われて聞きに来ていました。稲葉さんが私の話を聞くのは砥部町商工会での講演会に続いてこれが2度目ですが、私の話を是非広島でやって欲しいとお誘いがありました。「講演料はいかほど」と打診がありましたが、「元手が要らないので時価」とお茶を濁しました。稲葉さんのためなら一肌も二肌も脱がねばならないと思いました。
「驚いた 陰干し真っ赤な 唐辛子 ラッピングして 既に商品」
「商品は 誰に売るのか いかほどで まだまだ先の 長い旅ゆえ」
「夢語る 夢の実現 汗をかく 日増し輝き 増して嬉や」
「裾分けの お礼蜂蜜 お裾分け 辛いものには 甘さ対抗」