○三宅島への旅・ルポ③
今回の三宅島への旅は私の心に深い悲しみを残しました。早朝5時に到着し、他の島に立ち寄りながら再び帰る船に14時30分に乗るまるでの、まるで日帰りの旅に等しい7時間余りの間に2時間の講演を挟んで、佐久間議員さんの案内で忙しく島内を一周して視察したのです。行く先々で全島避難・一時帰島・部分帰島を余儀なくされた厳しい運命的住民行動の現場を立ちすくむように見てきました。そんな厳しい現実に会いながらもなお逞しく生きる人間の生命力もまた大きな衝撃と感激を受けたのでした。
危険区域を降りた私たちはまず島にしては珍しい大路池へ行きました。島の水源となっている池だけあって裏山には先程の白骨林が信じられないほど美しい、特別保護地区に指定されている椎の木原生林を有した池です。透明度も高く希少価値の高い水棲動物が棲んでいそうな場所でしたが、聞くところによるとここも心無い人の持ち込んだブラックバスによって生態系は崩れているとの事でした。
山の頂上付近にはガスの影響も見えますが、ここだけは風向きの影響を受けずに残っています。これも神のおぼし召しかと命の水の大切さを思いました。佐久間議員さんも一枚写真を撮らせていただきました。
この池は池というより湖に近いような大きいもので、うっそうとした周囲の緑に囲まれ周りの景色を水面に逆さ山として綺麗に写していました。池の傍で大きな大きな椎の木を見つけました。村の天然記念物というだけあってまるで島の木霊が宿るような神秘的な銘木でした。
写真の都合で余り大きく引き伸ばし出来ないのでこの大きさに留めますが、頭の先から枝分かれした椎の木はツr-ハウスを作りたいような威風堂々とした大木でした。私は日本全国を回って色々な巨木を見ていますが、この椎の大木も思い出に残る大木なのです。
この椎の木に別れを告げ、サンクチュアリーとでもいうべき、バードウォッチングが楽しめる三宅島自然ふれあいセンターアカカッコ館に立ち寄りました。アカカッコはこの島にしか棲まない野鳥の名前ですが綺麗な鳥のようです。一度は見てみたい鳥ですね。
今回の島一周では、谷間のあちこちで土石流対策の砂防工事で出来上がった現場が目に付きました。多分これから立ち枯れの木々が倒木すれば土石がゆるんで流れ出す二次災害の危険性も心配されるようです。
少し進んだ所にかつての役場の後がありました。ガス濃度の危険地帯なので既に役場は反対側の地域に移転していましたが、入口の屋根が崩れて痛ましい姿です。近くにある三宅島唯一の飛行場も閉鎖され、役場に掲げられた飛行場の利用促進看板が何かむなしく感じられました。
島には大きな港が2つありますが、太平洋の真っ只中にあるため季節の風浪が絶えず吹き、定期船が岸壁に着くのはその風浪によって穏やかな方を選ぶのだそうです。私たちが立ち寄らなかった岸壁に行きましたが、岸壁では考えられないような大きな魚が釣れるそうです。この日も沢山の人が釣り糸を垂れていました。岸壁に打ち寄せる波しぶきを見て、瀬戸内海の穏やかな海を見て暮らす私には、岸壁の大きさ、うねりの大きさに驚きました。
この立派な地区もガス濃度が高く住むことが許されないため廃墟となっているそうです。人間の住まなくなった家はガスの洗礼を受けてトタン屋根が見る影もなく朽ち果てていました。海岸には今も昔も変わらぬ波が打ち寄せ素晴らしい眺めでした。この青い海、青い空を求めて観光客が沢山集まる日々が一日も早く来るのを願っています。
「悠久の 時を越え打つ 波を見て 人の力の はかなさ思う」
「人住めぬ 家の屋根朽ち あばら見え 風のみ流れ 悲しかりけり」
「見上げつつ 木霊宿る 椎の木に 手合わせ祈る 島の幸せ」
「この姿 観光資源に ならぬかと カリスマだったら 知恵の一つも」
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