○あちこちにセカンドハウス
世の中の暮らしがリッチになったのでしょうか、町内のあちこちに立派なセカンドハウスがお目見えしています。「歳をとって定年退職したら、海の見える夕日の美しい場所にセカンドハウスを立て、社会の喧騒から逃れて自由気ままに生きてみたい」という夢は現代男性が描く老後のシナリオです。
しかし田舎暮らしはそんなに甘くないことを肝に銘じておかないと、「こんなはずじゃあなかった」と後悔をするのが落ちです。心得を少し話しましょう。
①人生の生活設計
自分の人生の生活設計なしにセカンドハウスの計画はありません。田舎暮らしは不便だから良いのであって、不便を便利にする必要はありません。電気だってランプにした方が楽しいのです。しかし都会暮らしに慣れた人はパソコンも瞬間湯沸かし器もウォッシュレットのトイレまでも持ち込みます。しかし肝心なのは「あなたはこのセカンドハウスを誰と何時までどう生かすのか」という生活設計がなければいけません。例えば60歳から田舎暮らしを始めたとします。車の免許を持って運転できるのはだいたい75歳までです。さらに定年後は仲間も限られてきます。また夫婦が長生きするという保障は何処にもありません。そう考えると自分の人生の生活設計なしにセカンドハウスを求めるのは、海図と羅針盤を持たずに航海に出るようなもので後で後悔します。
②土地を選ぶ条件
土地を選ぶには、まず風景の良い所と土地が安い所を考えるものです。ところが風景の良い所は風が強く、水を引くのに不便、道が狭いなどの制約が必ずあります。また地価が安くても造成や許認可、道、上下水道などに思わぬ付帯工事費がかかります。土地は遠くから眺めて見るとよく分かりますが、前面の見晴らしもさることながら、背後の風景も面白いもので、クヌギやナラなど季節感が味わえるような落葉樹が茂る林は最高でしょう。要は丹念に足を運び理想の場所を幾つか選び、家族の了解を取り付け事を運ぶと上手くいきます。
③資金計画と夢の設計図
夢は得てして大きいものです。「大草原の小さな家」のような映像を見、「セカンドハウス」のような本を読むと必ずといっていいくらいログハウスが欲しくなります。事実セカンドハウスはログハウスが圧倒的に多いようです。しかし高温多湿の日本の風土に必ずしも外国の建築物が合うかというと問題です。資金に物を言わせ馬鹿でかいものを建てると、維持管理に余計な費用がかかります。何処と何を不自由にするか、この不自由さが田舎暮らしのハラハラ・ドキドキ・ジーンなのです。
④地域のコミュニティとの接合
突如として田舎の原風景の中に違和感のある施設を持ち込む愚かさを、地域の人は意外と冷たく感じるものです。その人だけならまだしもその人に繋がる人が、車と土足で踏み込むと地域のバランスが崩れるものです。地域の人とあいさつができたり仲良く付き合うにはそれ相当の覚悟が必要でしょう。人間関係の煩わしさを断ち切るために田舎暮らしをしたいのなら、考え直した方が賢明かも知れません。人間の行く所、人間の暮らしのある所必ずコミュニティはついて回るのです。
かくいう私も田舎者でありながら田舎暮らしを人間牧場で始めようとしています。しかし先に述べた4つのことは注意をしているつもりです。田舎暮らしを楽しむためにも・・・・・・・。
「セカンドといえるかどうか分からない犬小屋ハウスに夢を託して」
「今やれる青春求めて建てた家ウトウト昼寝蜂が覗きに」
「金持ちと言わんばかりの家が建つオール電化の都会持ち込み」
「あいさつをしても返さぬ都会人車よけろと言わんばかりに」