人間牧場

〇「ないものあります」という本は面白い(その2)

 友人橋本千春さんから借りた「ないものあります」という、面白い本を読みました。そこで私も「ないものあります」という本の向うを張って、私なりに24項目の「ないもの」を思いつくまま列記してみました。①馬の骨、②ウドの大木、③飴の鞭、④石頭、⑤色眼鏡、⑥金の卵、⑦道草、⑧四方山、⑨でくの坊、⑩ぼんくら、⑪口三味線、⑫空念仏、⑬藪から棒、⑭歯に衣、⑮地獄行きの切符、⑯手前味噌(裏が味噌)、⑰高嶺の花、⑱泥縄、⑲赤い糸、⑳尻餅、針のむしろ、空耳、上の空、ろくでなし、あんぽんたん、馬鹿、盆暗などなど、考えればきりがないほどあるようです。

まだ見たこともないウドの大木のウド

 例えば「金の卵」は、現代の人に言っても通じない言葉です。私たちが少年の頃は、中学校の義務教育を終えた少年少女は、集団就職列車に乗ってネオン輝く都会を目指しました。高度成長の著しかった当時の都会は、給料の安い中卒の働き手を「金の卵」と持て囃しました。あれから半世紀余が経ちましたが、田舎は過疎、都会は過密という社会現象を引き起こしているのです。ある小学生が夏休み子ども電話相談室というNHKラジオ番組に、「道草ってどんな草ですか?」と、真顔で訪ねたそうです。笑い話のようですが、道草などせずに学校~家庭~学習塾に通う子どもにとって、道草などする暇はないのです。ゆえに「道草」と聞いて「道草とはどんな草だろう?」と思うのは当然かも知れません。

 「手前味噌(裏が味噌)」も、味噌屋の屋号か会社名、または味噌の商品名と思うのは当然です。私はこのないものを逆手にとって、自分の名刺の裏にギノー味噌の田中社長さんにお願いして、CMを出してもらいました。裏のレイアウトは私に任せるというので「裏が味噌」と書いたところ、これが評判になってCMの効果は抜群となりましたが、できれば「手前味噌」か「裏が味噌」という商品名を売り出したらいいのにと、密かに思っています。私と妻を結んだであろう「赤い糸」も架空のものです。ちょっとした遊び心で世の中はウィットに富んで楽しくなります。私の出版している落伍ネタ本「夕日徒然草」にも、早速「ないものあります」という小見出しをつけてこのことを書こうと思っています。

  「友人に 借りて読んだが 面白い 『ないものあります』 私も幾つか」

  「世の人に 金の卵と 問うたなら それ何ですか? 言われてしもた」

  「裏が味噌 どこの会社の 味噌ですか? 名刺の裏に 書いたCM」

  「世の中にゃ ないものだのに ありそうな 予感の言葉 沢山あります」 

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