人間牧場

〇成人の日の懐かしい思い出
 私が成人になった頃からつい最近まで、成人の日は1月15日と固定日でした。この日は国民の祝日で、日本全国で成人式が行われ、多くの若者が大人になった自覚をしたり、国民も国旗を立てて成人の日を祝いました。私は13年間教育委員会に勤め青少年教育を担当していたので、成人式を主催する側として企画をしたり運営をしたりして成人式に関わりました。成人式には自分の成人式、青年団長として祝辞を言うための成人式、各地の成人式で記念講演を10回近くやった成人式を含めると、多選の首長さんや教育長さんなどを除けば、成人式への出席参加は多分圧倒的に多いように思うのです。

 成人の日は、午後からNHKで「青年の主張」という特番が組まれ、全国の予選を勝ち抜いた若者がNHKホールで主張し、覇権を争っていました。実は私も23歳の時第14回NHK青年の主張の県代表に選ばれているのです。当時私が青年学級委員長をしていた頃、学級で「ラブレターの書き方」という講座が開かれました。スマホや携帯もなかった当時の愛の告白手段の一つはアナログなラブレターで、文章の書き方をしっかりと学びました。講座が終わった次の週、青年学級主事さんの勧めで、全員が青年の主張に応募するため原稿用紙3枚に自分の主張を書いて提出し、100人もの学級生の原稿はNHK松山放送教へ届けられました。やがて2週間後学級生の元へそれぞれ1枚のハガキが届きました。「あなたの主張は素晴らしい。来年もまたどうぞ」という落選の通知でした。ところが私の元に届いた1枚のハガキだけ、「原稿審査にパスしました。〇月〇日県大会を行いますのでNHK松山放送局までお越しください」と書かれていました。

 さあそれからが大変です。降って湧いた出来事を受けて、小学校にあるオープンリールのテープレコーダを借り受け、仕事を終えた私は毎夜原稿読みの練習を始めました。最初は5分間という時間ばかりが気になって、中々進みませんでしたが、物覚えが悪いながらもどうにか宙で言えるようになりました。発表のその日私は原稿をトイレに持ち込み、「よっしゃあ覚えた。これで大丈夫」と意を決しトイレを出ましたが、こともあろうかその原稿をトイレに置き忘れたまま、列車に乗ってNHKへ行きました。いよいよスタジオで発表大会が始まりました。原稿審査をパスした他の10人が次々と登壇し、素晴らしい発表をする度に胸の高鳴りを覚えました。やがて私の順番がやって来ました。何ということでしょう私はメモを書き込んだ原稿用紙をわが家のトイレに忘れて出場してしまったのです。

 「しまった」と思いましたが後の祭りでした。仕方なく開き直って原稿もなく諦め、宙でしたダメ元での発表が終わり、やがて審査員の別室審査を経て結果発表があり、司会のアナウンサーから、「第14回NHK青年の主張愛媛県大会の県代表は『私の訴えたいこと』と題して発表した双海町の若松進一さんです」とコールされました。あの時の感激は今も忘れられない懐かしくも恥ずかしい思い出で、一生忘れることは出来ません。以来私は何度も人の前に立ち何度も話す機会を得ましたが、未だに内気で口下手ながら原稿に頼らず、アドリブで話をするようになりました。この時の経験は私の人生を大きく変えた出来事でした。

「その昔 成人の日には NHK 毎年特番 青年の主張」
「100人の わが町青年 応募した 青年の主張 今も忘れじ」
「原稿を トイレ忘れる 大失態 開き直って 見事乗り切る」
「あの時の 経験あるから それ以来 アドリブ話す 癖が今でも」

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