人間牧場

〇磯遊び

 私たちの町では春になると、ほぼ東西16キロの海岸に沢山の人がやって来て、ヒジキやワカメといった海藻類に加え海岸線に自生するツワブキを食用として持ち帰って食べるのです。海草類は漁協が持っている共同漁業権内なので、勝手に取ることはできないのです。さどい人は月夜の晩に根こそぎ持ち帰る人もあって漁業者も頭を痛めていますが、おかず程度に取って帰るくらいなら大目に見てくれるので、思い思いの出で立ちで取っている人をよく見かけますが、特にヒジキは収穫後の処理が大変だろうなあと思いつつ、やり過ごしています。

磯遊び1 海岸でそうした行為をすることを磯遊びといいますが、上を走る国号の喧騒を逃れて幾つかの海岸へ降りる階段を下ると、そこはもう別世界が広がっていて、冬の日差しの少ないこの時期ながら潮風に乗って磯の香りがプーンと匂って、思わず深呼吸をしたくなるのです。
 このほど午後の休日を利用して、仲間4人を誘い磯遊びをしました。私は子どものころからこんな遊びを楽しんでいますが、他の4人は初めてとあって興味深々でした。私は彼らにまず滑りこけないように注意をしました。海岸は石ころがゴロゴロして、またまるで洗濯板のような地面にも青海苔等の海草がへばりつき、よく滑るのです。注意散漫になると長靴でも転げて尾てい骨を思い切り打つのです。

 磯遊び2今日は1時間ほどの磯遊びでヒジキを収穫しました。それをキャリーや網袋に入れわが家の庭に持ち帰りました。さあそれからが大変です。陽のある間にヒジキを溜めた桶で水洗いして砂や小石を取り除き綺麗に洗ったら大釜にてんこ盛りにして下から火を思い切り焚くのです。薪はあらかじめ準備をしていたものと、裏の林から拾い集めた杉や桧の小枝を延々3時間燃やし続けるのです。磯遊びをした仲間は用があってそれぞれ散って帰りましたが、後はサンデー毎日の私が、暗くなった午後7時過ぎまで懐中電灯の光を頼りに火の始末をしました。
 わが家では、前日に収穫したヒジキの後始末も残っていて、それらをサナに干し仕上げをしていますが、このところ気温が高いものの風がまったく吹かないため、ヒジキが乾かずヤキモキしています。

磯遊び3 今日は私が収穫して茹でたヒジキを処分するのに一日がかりでした。ヒジキは茹でると匂いと灰汁が出るため、ゴム手袋をして作業を進めましたが、灰汁が指先の爪の間に入り込みタダでさえ無骨い手が見苦しくなりました。まあ女性の手を握るような歳でもないのでわれ関せずといったところです。予想より早く今年のヒジキの磯遊びのシーズンを終えました。次は3月の大潮ころにワカメ、5月ころに天草のシーズンを迎えます。
 海沿いに暮らす私にとって、ヒジキもワカメも天草も未利用資源です。またそれらを加工するエネルギーも野山にゴロゴロしている木や枝葉の実利用資源です。未利用資源と未利用資源を組合せれば、労働対価として新しい価値を生んで行くのです。ただしその行為は道具と技術、それに汗が絶対条件として必要です。この4~5日とても楽しい健康的な汗を思い切りかきました。

  「未利用の 資源求めて 磯遊び 柔らか日差し 全身浴びて」

  「磯遊び したこともない 友誘い 波打ち際で 色々体験」

  「3時間 火を焚きヒジキ 大釜で 暗くなるまで じっくり湯がく」

  「さあどうだ 田舎暮らしの 楽しさを 見せびらかせて 健康的に」

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