人間牧場

〇母の13回忌法要(その2)

 私の家のお寺は下灘にある臨済宗東福寺派の長楽寺です。先年住職が亡くなり、跡を継いでいる息子さんも病気がちで、仏事一切は慶徳寺の山口住職が兼務をしているため、13回忌法要は山口住職に頼みました。山口住職さんは、私が度々講演に出かけた大分県本匠村(合併して現佐伯市)出身であったり、双海史談会のメンバーであったりするので、何かと入魂な間柄で、昨年は達筆な人柄を見込んで「恩」という字の掲額を書いてもらいました。また住職の奥さんは双海町更生保護女性会の会長さんでもあり、子ども体験塾の実行委員のメンバーでもあるので、共々の間柄なのです。

 法要の読経が終ると、和尚さんは私のリクエストに応えて「絆」をテーマに即興で説教をしてくれました。孫たちも読経の後のしびれが切れた時間でしたが、みんな静かに聞いてくれました。ある女性が震災で行方不明になった母親の捜索を何日もした挙句、瓦礫に埋まって手だけしか出ていない姿の中で、「この手は私の母です」と取りすがり、掘り出したら本当にお母さんの遺体だったそうです。顔や姿形ならいざ知らず、手を見ただけで自分の母親だといえる人が果たしてい何人いるだろうと、涙の出るような感傷感動的な話をしてくれました。私も日ごろ人前でお話しする機会があるだけに、とても参考になるお話でした。

 

13回忌法要のお墓参り
13回忌法要のお墓参り

 読経と説教が終ると全員揃って、住職さんとともにお墓参りに出かけました。親族揃ってのお墓参りは久しぶりだし、未来ある孫たちにも仏事全般を体験させたことは何よりも大きな収穫でした。人はどこかから産まれ生き、どこかへ去るのでしょうが、先祖に思いを馳せながら連綿と続く人間のルーツを、一瞬ながら垣間見ることが出来たのです。
 和尚さんと「跡取り」について色々な雑談をしました。わが家には親父・私・息子・孫と4人の長男が現在もひとつ屋根の下で暮らしています。親父は祖父から跡取りとして育てられたようです。その親父は私を跡取りとして育てました。私も少々心もとないながら長男を跡取りとして育てています。お陰様でまだまだ独り立ちできないながら、家族で同居の道を選んでくれました。その息子に託すのは長男孫の教育です。こんな文明の発達したの世の中で、跡取り教育などとは古臭いと思われますが、戦後日本人が忘れてしまった跡取り教育をもう一度復活させなければと、人はどうであれわが家では思っている今日この頃です。

  「説教を しびれ切らせて 聞く孫に よくぞ聞いたと 頭撫でやる」

  「手見ただけ これは私の 母ですと 言える人間 いるのだろうか」

  「わが家には 跡取り4人 ちゃんといる これでひとまず わが家安泰」

  「海見える 墓地にお参り やがて俺 親父とともに ここに埋まる」

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