人間牧場

〇ビジョンとは

 私が双海町という小さな町の役場に勤めていたころは、今にして思えばとてもいい時代で、地方公務員でありながら自分の心に望み(ビジョン)を持ち、その望みを実現するために思い切り羽ばたくことができ、勿論よく働き苦労はしましたが、それなりの成果を収めることができました。私のソフトビジョンは「夕日・ほたる・花」というアメニティであり、ハードビジョンは「3つの公園」づくりで、それらを実現することで結果的に住む条件と訪ねる条件が整備され、この町で豊かな心で生きたいという願いからでした。公民館時代に私が提唱した「仲間・健康・生きがい」という3つの目標も、企画調整室時代に提唱した「人づくり・拠点づくり・住民総参加のオンリーワン(日本一)づくり)も全て、住民にビジョンを示すまちづくりだったように思うのです。

 日産自動車の再生に取り組んだカルロスゴーンが、「ビジョンは退屈ではダメだ。船を建造するとは人を集め、木材を用意し、人に個々の作業を割り当てることではなく、大海原を目指すという目的を与えることだ」と言っています。彼が言うようにまちづくりも分かり易くて明確なビジョンを示さなければ、市民の心を捉えることはできないのです。
 若いころ城の石垣の話を聞きました。城の普請場で石垣を積んでいる石工さんに、「なたたは何をしているのですか?」と聞くと、「わしは石を積んでいる」と答えたそうです。傍にいた親方に聞くと、「私たちは石垣を積んでいる」と答えました。現場監督のような人に同じ質問をすると、「個々に石垣を積んで立派なお城を建てる」と説明しました。家老に聞くと、「ここに立派な城を建て敵が攻めてこないようにして、領民の暮らしが豊かになるようにする」と答えたそうです。石工・親方・現場監督・家老それぞれに、持ち場でしっかりと役割を果たしていることは分かるのですが、家老のビジョンが現場監督から親方に、親方から石工に伝えられていないことに気付くのです。

 城を築く上位下達の封建時代ならこれでも命令一下済むのでしょうが、現代はそうは行かず、いかにビジョンを共有できるかが成功のカギとなるのです。ビジョンのない小手先だけの方法で人を集め、木材を集め、個々に作業を割り当てたところで、海原を航海できる立派な船もできないし、船が海原を越えて目的を果たすこと等到底できません。
 人は誰も幸せになりたいといという願望を持っているし、健康で長生きがしたいとも思っています。また程ほどのお金も欲しいし、心に持っている望みも叶えたいとも思うでしょう。自分の人生においても「どう生きたいのか」という明確なビジョンがあれば、一日一日の努力の積み重ねで、そのビジョンに近づくことができるのです。さあ明確なビジョンを持って歩きましょう。

  「ビジョンなき 人生何の 意味があろ 大海原を 目指す気概を」

  「石を積む 石垣を組む 城建てる もっと大事は 何のためにぞ」

  「人は言う ビジョン語るにゃ 遅過ぎる そんなはずない 年齢じゃない」

  「俺にゃまだ 残り火赤々 燃えている これからですよ 俺の人生」 

 

 

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