shin-1さんの日記

○凛として木枯しに立つ寒椿

 昨晩は7時から、地元上灘中学校の学校評議委員会が開かれ出かけました。この時期になると高校受験も終り、あとは結果を待つだけで学校もすっかり落ち着いた様子でした。校長先生もいつになく顔色がよく、校長室へ入るなり一枚の保護者宛の文章を見せていただきました。今日の私のブログのテーマである「凛として木枯しに立つ寒椿」という名句が書いてありました。内容は二人の生徒の絵画の話が紹介されていました。男子生徒の作品が愛媛県代表として全国教育美術展に出品され、見事入選したそうです。また女子生徒の作品は来年度のクロッキー帳にお手本として掲載されることになったようです。

 上灘中学校は小規模校で美術専任の先生がいません。同じような学校を掛け持ちしている先生が時折指導に見えられるのですが、それにしてもそんな片手間でこれだけの快挙ですから凄い指導力だと思いました。

 かつて私は子どもの数が10数人という大洲市柳沢田処小学校を訪問したことがあります。そこで見た絵はこれまで見たどの絵よりも視点が上から下からとまったく違っていて、生き生きと輝いて見えました。それもそのはずその学校の絵は県下の美術展で賞を総なめにするほどの活躍ぶりだったのです。その原因が美術の先生の指導によることは容易に想像できましたが、小規模校などものともしない快挙に、「教育は人なり」と思ったものでした。

 ひととおり先生の説明を聞いてから、評議員の私に発言を求められましたが、私は以上のような事例を紹介しながら、その席にいない美術の先生を褒め讃え、少し意見を述べさせてもらいました。美術以外この学校には小規模校ながら学科ごとに専任の先生がいます。いわばプロの先生がいる訳ですから、美術の先生以上の働きが出来ても可笑しくはないのです。「教師が変わらなければ子どもは変らない」。これは私の持論ですが、今の教師はやれ「小規模校だから積極性がない」とか、「この学校の子どものレベルは低い」とか、現状を否定していつも文句をいいます。「積極性がなくレベルが低いのはあなたです」といいたい気持ちです。

(多分咲いても私以外誰一人気付かないであろう道端の崖っぷちに咲くやぶ椿の花は、まさに世界にひとつだけの花なのです。)

 まさに二人の生徒の快挙は「凛として木枯しに立つ寒椿」そのものと感じましたが、この寒椿を開かせた一番の功労者は美術の先生である事を私たちは見抜かなければならないと思うのです。

 昨日人間牧場へ行きました。人間牧場に至る狭い山道のあちこちにはやぶ椿の花が今を盛りと咲いていました。山奥の道ゆえ見る人もなくただひっそりと咲き誇り、道には椿の花が印象的に赤く散っていました。寒椿の花の一句を思い出しながらデジカメで写した写真を取り出して、校長先生と私の偶然にして一致した椿の花への思いに思わず苦笑してしまいました。

 校長先生は寒椿でしたが、私は雑草の如きやぶ椿であり余命いくばくもない春椿です。でも凛としてがけっぷちに逞しく生きて咲くやぶ椿にもそれなりの意味はあると思うのです。私たちは名花の椿を美しいと思うことに馴れてきました。学校でいえばよく出来る子どもです。子どもの頃から脚光を浴びてきた子どもを愛でるのは簡単ですが、人知れず頑張る子どもに思いを寄せて生きる希望を見出してやることも大切な教師の仕事なのです。やぶ椿の花を愛でてやる、これこそ生きる力を育むことでしょう。

(細い一本の道には赤いやぶ椿の花が印象的に散り落ちていました。これも美しいものです。

 校長先生の嬉しそうな顔の原因はもう一つありました。登校できなかった登校拒否の生徒が今年になって登校し始め、県立高校受験にまでこぎつけたというのです。間もなくその結果は合格発表という形になって現れるでしょうが、やぶ椿のように咲けば褒め、道端に落ちてもなお美しさを保つ続けているやぶ椿の花を褒めてやり、新たな旅立ちへ送ってやって欲しいと願っています。

 たった3年しかこの学校に思いを寄せることが出来なかった私ですが、この三年間先生も生徒も、勿論学校も確実に力を付けていい学校に成長させてくれました。その成果に大きな拍手を送りたいと思います。

  「年三回 通っただけの 中学校 椿開いて ほのぼの嬉し」

  「この椿 開いた訳は 先生が 厳し優しい 陰徳結果」

  「教育は 自律自立の ためにある 手助けできぬ 教師は要らぬ」

  「学校に 来れない子ども 根気よく 指導お陰で 始動の気配」

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“shin-1さんの日記” への1件の返信

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     お忙しい中でのご来校、ありがとうございました。早速の、ブログも拝見させていただきました。私も含め本校教員が、若松さんのお言葉を素直に受け止め、現在の自分自身について見つめ直す大変良い機会となりました。また、私の思いを代筆していただいたようなブログについては、全教員に回覧いたしました。改めて教育について考える時間をもつことができました。
     卒業式の準備も終わり、後は本番を待つの、3年生は、私とともに、上中に入学しました。この子たちの様子が、いわば私の評価でもあります。考えると、怖いようで、でも、やりがいのある仕事だと思います。善し悪しは、誰が決めるのでもなく、巣立っていく子どもたちであることを認識し、決して教師の自己満足で終わることのないよう、学校・教科・部活動等の経営を心掛けていきたいと思います。
     また、常に新しい発想の大切さを痛感いたいました。いつまでも「ふるさと双海」ではなく、一歩踏み出した視点から見つめ直すこの大切さや、これからの子どもたちに、もっと広い視野に立たせてやることが、じつは、高校入学後や社会人になって必要とされる人間力の育成だと思います。その経験があるから、改めて双海の良さに気付くのだとも思います。まさに、「ふるさとは遠くにありて思うもの!」
     まだまだこれから、美術教師に負けぬよう頑張ります。ありがとうございました。

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