人間牧場

〇八幡浜市日土を訪ねる(その3)

あらし山山荘
あらし山山荘
玄関先で行儀よくお客を迎える福助さんの置物
玄関先で行儀よくお客を迎える福助さんの置物

 退職をしてから松山のマンションと、八幡浜市日土の生家の二居住地を、程よく使って暮らしている親友の清水さんから、月見がてら年輪塾をやるので来ないかと誘われました。清水さんは既に他界した両親が暮らしていた生家を、最近リフォームしたようなので、興味もあって仲間とともに喜んで出かけました。日土は急峻な地形ながらみかん所で、清水さんの家はミカン畑の中に、まるでお城の石垣のようにせり出すように建っていて、折からの台風余波の南風が窓からもがり笛を立てて吹き込んで、残暑を吹飛ばしていました。

観月演奏会
観月演奏会

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 リフォーム工事で板張りフローリングをしたようですが、そこここに古民家の風情が残り、特に玄関の上がり口に、すすけた「福助」さんの置物が座布団の上に行儀よく座って、私たちに無言の教えを示していました。神様や仏様を大事にする篤農家らしい落ち着きがあり、そこここに清水さんの人徳を育んできた足跡を感じました。この日は2時間ばかり清水さんを中心に年輪塾の学びをしたあと、庭先に出て観月会が行なわれました。あいにく月は殆ど見えない曇りでしたが、集落の向うにはまるで北斗七星と見紛うほど行儀よく並んだ、人家の明かりがぼんやりと霞み、とても印象的でした。

一芸もここまでくると凄いこと
一芸もここまでくると凄いこと

 やがて清水さんと近藤さん、兵頭さんの3人がギターやバンジョウ、バイオリン、コカリナなどを使って演奏を始めました。雨ニモマケズ、KINJIRO SONG、私の子供たちへ、私に人生と言えるものがあるなら、おおスザンナ、琵琶湖就航の歌、故郷、カントリーロード、若松一家だバカボンボン、野に咲く花のようにの、計10曲を披露しました。この日のために毎週集まって練習しただけあって、見事な演奏でした。私もご指名を受け手持ちのハーモニカで即興宜しく、月の砂漠と高校三年生の二曲を披露しましたが、お恥ずかしい限りでした。3時間近くに及んだ楽しい交流会も、ぱらつき始めた小雨で水入り中締めとなり、私と松本さんはお暇して帰路につきました。

 いい仲間との語らいは楽しいものです。年輪塾の塾生は一芸に秀でていて、私のような下手糞なハーモニカで、お茶を濁す無芸な人間は、少し肩身の狭い思いがしますが、それでも次までに練習して少しでも腕を磨いておこうと、心を新たにしました。年輪塾で私が提唱する「処」ともいえる「あらし山」が、日土の山奥にできました。また一芸もそれぞれがグレードを高めつつあります。私はこの日清水さんを通じて、辻さんに頼んでいた「二宮金次郎の教え」である、「至誠・勤労・分度・推譲」という掲額を受け取り、雨に濡らさぬよう大事に持ち帰りました。中江藤樹の「五事を正す」とともに大切に使い、日々の暮らしの誡めにしたいと思っています。

  「山奥の あらし山なる 山荘に 仲間が集い 観月楽しむ」

  「処を造る 仲間の想い 凄いこと 田舎に住んでも 心は錦」

  「一芸を 披露するため 集って 練習積んで この日に備え」

  「茫漠と 過ぎ去る日々に 少しだけ 味付けすれば 悔いなく過せ」

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