人間牧場

〇鍬と楔(くさび)

 この冬一番の寒気団が南下し、日本海側では大雪が降っているようです。私の住む四国愛媛県も気候温暖といいながら、朝晩は0度近く、真昼でも最高気温が10度を下回り、しかも関門海峡を通った北西の季節風が吹き荒れ、海岸国道378号の所々では塩水が、まるでシャワーのように車に降りかかりました。こんな日はストーブを焚いた暖かい部屋で、コタツに入ってテレビでも見て過ごすのが一番ですでしょうが、貧乏性の私にはそれも似合わず、戸外へ出て果樹園の地面を鍬で掘り返そうと思いつきました。

鍬はくさびで生き返る

 倉庫から三つ鍬を持ち出し、地面が固くなった甘夏柑の下を掘り返し始めました。夏の間に茂っていた草もいつの間にか枯れて、順調よく土を掘ることができました・ヨモギやオオバコの根が土をはんでいるのを、鍬の背で叩いて解していると、何やら鍬の調子が悪いのに気が付きました。長年使っているため、鍬の根元にガタが来て抜けそうになっていました。作業を中断して倉庫に戻り、鍬をバイスで挟んで抜きました。さらに柄の付け根に打ち込んでいたくさびも取り、柄元を鋸とカンナで削り再び元の鞘に納めました。

 鍬の柄に鉄のくさびを打ち込まないと、鍬の刃はすぐに抜けてしまいます。「くさびを打つ」という言葉がありますが、僅か厚さ5mm、長さ2~3cmほどの鉄のくさびが、これほど重要な役割を担っているとは知る由もなく鍬を使っていましたが、改めてくさびの威力に感心させられました。農作業用道具は日々の農作業を支える大事なものですが、これら全てにお百姓さんの長年の汗と知恵が込められています。人間世界も人と人とを結ぶ接点に、くさびのような人間が必要です。そんなことを思いながら修理の終わった鍬で、少しの間畑の土を掘り返しました。お陰様で身体がポカポカと温まりました。

「寒いねえ 会う人ごとに 声かける この冬一番 寒気が南下」

  「寒い日は ストーブコタツ 部屋の中 テレビ見ながら 過ごすが一番」

  「鍬を持ち 果樹園畑 掘り返す 鍬の不具合 途中で修理」

  「鍬根元 小さい鉄の くさび打つ 見違えるよう 少し汗かく」

 

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